親御さんが「がっかりした」エピソード
小学校1年生のお子さんをお持ちの保護者から伺ったお話です。
お子さんは支援級判定だったそうですが、今は普通級に在籍されています。
担任の先生のご協力もあり、ご本人も保護者も大いに努力をされて、授業についていっているそうです。
そんな中で、お母様が「とてもがっかりした」とおっしゃるエピソードがありました。
絵についてです。
教室に貼り出されていた子供たちの絵の中で、お子さんの絵は「何を描いてあるか全くわからない、全然ダメでした」とおっしゃっていました。
辛い見え方がする可能性も
お母様のお気持ち、お察しいたします。
小学校1年生になれば、多くの子供たちは、結構、器用に絵を描くものです。
そんな中で、たとえばグルグル描きや点や線のような絵が混じっていれば、確かに目立つでしょう。
普通級で、他の子供たちに追いつこう、ついていこうと必死に努力されているご家庭にとっては、お子さんとクラスメイトとの発達の差を目の前に突きつけられるような出来事だっただろうと思います。
この場面の本質は絵そのものではなく、お子さんの育ちの遅れ(と親御さんが感じているもの)の象徴として絵が際立って見えたということでありましょう。
親御さんがそのようにお感じになるということに、三輪堂はただ寄り添いたいと思っています。
絵は心の表現
さて、本質としてでも、象徴としてでも、どちらでもよいのですが、「絵」ということについて、、、
わたしは、どんなお子さんの絵も素晴らしいものだと思います。
実物を見てはいませんが、きっとこちらのお子さんの絵も、ご本人が色や形を楽しみながら描いたものだろうと思います。
あるいは、なぐり描きをする腕の動きを楽しんだのか、直感的に自分の気持ちのあふれるままに紙に向かったのかもしれませんね。
その絵には何かしらのお子さんの心が表現されていることでしょう。
絵の価値とは
絵とは、見た目の整ったものだけが優れているのではありません。
描いた人の思いがまっすぐに込められたもの、見る人の感情を動かすものが優れた絵だと思います。
他の人には何のことだかわからない絵でも、あなたの心が動かされるならば、それは優れた絵だと言えるでしょう。
たとえばわたしにとっては、息子が幼い頃に描いた、うす~~い灰色の線のなぐり描き(よく見ないと見えないくらいうす~い線です)が宝物です。
息子が「ママ結婚しようね、って描いたんだよ!」と言いながら渡してくれたからです。
世界中でわたしにしか価値のわからない紙切れですが、わたしには最高の「絵」なのです。
見た目が大切なのではありません
幼い子供たちでも、学校などの集団生活の中で、周囲のお友達と自分とを比較して、自分に劣等感を持つことがあります。
冒頭のお子さんも、もしかしたらいずれ「自分は絵が下手だ」という思いを持つようになるかもしれません。
そのことで、絵を描くことや、自分を表現することに苦手意識を持つことになっては、とても残念ですね。
保護者や指導者はぜひ、お子さんの絵を思い切り褒めてあげてください。
「これが小学生の絵なの?」と思わずに、「このなぐり描きが絵なの?」と思わずに、どうぞ心から褒めてあげてください。
言葉で褒められても伝わりにくいお子さんには、花丸をつけてあげたり、額に入れて壁に飾ったりして、目で見てわかるようにその絵を喜んであげてください。
絵にタイトルをつけてみよう
お子さんの絵にタイトルをつけてあげる取り組みもお勧めですよ。
- 赤い点が目立つ絵なら「リンゴ畑」
- カラフルな線がたくさん描かれていたら「虹の世界」
- ピンク色の絵なら「喜び」
- 灰色の絵を「悲しい一日」
など、など。
そうすることで、お子さんの絵が他のどこにもない「特別」な存在になります。
お子さんと保護者とで、絵の世界を楽しむきっかけになればと思います。
絵への思いが変わると
こうして、親御さんの、お子さんの絵に対するお気持ちが変わると、そのお気持ちはそっくりそのまま、親御さんがお子さん自身のありようを見つめるまなざしに反映されてくるでしょう。
絵でも、なんでもいいのですが、お子さんの表現したものを美しく素晴らしいものとして捉えられるときには、お子さん自身をも美しく素晴らしいものとして捉えています。
いま、「美しく素晴らしい」という言葉を使いましたが、これは別に、そうなることを目指そうとしなくても良いのです。
ただ、ご自身の現在地をそのまま認識するだけで十分です。
お子さんの絵が下手で力不足だと感じるなら、そう感じるままで大丈夫です。
ご自身の感情をそのまま受け取っていくことが一番大事です。
その中で、絵に対する取り組みを続けていくと、いつかきっと何かの変化が見えてくるものと思います。
もし、そうしたプロセスの中で、苦しくつらい思いをするときは、どうぞ三輪堂にお話を聞かせてください。
作品ギャラリー
三輪堂では、お子さんの作品をご紹介する「作品ギャラリー」を展開しています。
よろしければ、あなたのお子さんの作品の写真もぜひお送りください。
絵にはぜひ名前をつけてあげてください。
保護者様ご自身で名づけをするのが難しい場合は、よろしければわたしがお子さんの絵から感じた気持ちを名づけさせていただきます。
自分の内面世界を、何かの形で表現することは、それだけで素晴らしい行為だと思います。
一人ひとりが体感している「世界」を、皆で共有し合える場になればと思っています。