770-1 日常生活でできる働きかけ
前回は、お子さんの発音が上達する平均的な年齢や言語訓練を開始できる目安をご紹介しました。
今回は、ご家庭で日常生活の中でできる、お子さんのお話の力を伸ばす働きかけをご紹介します。
770-2 できるところから一歩ずつ
お話の力を伸ばす、と大上段に振りかぶりましたが、前回のブログでもご紹介したように、「話す」ことにはご本人の発達状況や周囲との関わり方など、さまざまな要素が影響します。
そのうちの一か所を育んだからといってすぐにお話の力に結びつくわけではないので、全体的に育っていくのを待ってあげることがとても大切です。
と同時に、全体を一気に育てようとしても育たないのもまた事実ですから、やはりできるところから一歩一歩進んでいくのが大原則だと思います。
のど、声帯、舌、唇などに器官的な問題がある、難聴や脳性まひなどの背景がある、といった場合は、言語聴覚士のような専門家の力をぜひ借りたいところですが、 心と身体の土台を育むのは基本的にはご家庭でできること、ご家庭にしかできないことです。
たとえば、構音器官を育むことを考えてみましょう。
構音器官とは、舌、唇、あごなど、音としての言葉を発声するために用いられる器官のことです。
770-3 いろいろな口の動き
まずは「口の動き」をいろいろな方向から見直してみることをお勧めします。
奥歯でよくかむ
何を食べるときにも、奥歯でよく噛みましょう。
あごを動かす運動になります。
よく噛むことで消化を助け、健やかな心身を育んでくれます。
あまりにも基本的なことのようですが、人が育つ・生きていく上で一番大切なのは、こうした日常的で地味なことを淡々と続けることだと思います。
前歯でかじり取る
大きなリンゴやサツマイモを丸かじりしたり、わざと大きく切ったコンニャクを嚙み取ったりしてみましょう。
大人は無意識に行っているのでわかりにくいのですが、「かじり取る」動作をする際には、邪魔にならないように唇を持ち上げたり、熱いものが歯茎に触れないように歯の先だけでそろ~りと食べ物に触れたりと、実はいろいろと繊細な動きをしています。
口の周りを繊細に動かす練習に。
前歯の抜け替わり時期のお子さんには痛みを与えてしまう可能性がありますので、気をつけてあげてくださいね。
口の中に入っているものを口全体に動かす
アメや氷を口の中に入れてしゃぶったり、左右の頬に入れた食べ物を移動させたりしてみましょう。
片方の頬にイチゴ、もう片方の頬にミニトマトを入れて、左右を入れ替えたり、どちらの頬に何が入っているかを当てるゲームをしたりすると、楽しく口の運動ができます。
ちょっとお行儀が悪いかもしれませんが・・・(^ p ^) お家の中でなら、いいんじゃないかな!?
なめる
舌で何かの表面をなめる・なめ取る動きを練習してみましょう。
棒つきキャンデイを舌先でちょこちょこっとなめたり、ソフトクリームを舌全体でべろっとなめ取ったり。
同じなめるのでも、対象の形が違うと舌や唇の動かし方も変わってきます。
箸、スプーン、フォーク、お皿(のような平たい表面のもの)など、さまざまな形のものでチャレンジしてみましょう。
表面に砂糖やハチミツなどをまぶすと、なめる動作に意識が向きやすくなります。
舌の繊細な動きの練習になります。
練習場面でお皿をなめると、実際の食事中にもなめるようになってしまうお子さんもいらっしゃいます。場面の区切りが苦手なお子さんには、一般的なマナー上、なめても差し支えないとされるもので練習しましょう(板チョコ、ガリガリ君のような平たいアイスなど)。
たぐり込む
唇や舌で食べ物を口の中に少しずつ送り込んでいく動きも、口腔内の繊細な動作の練習になります。
ラーメン・そば・うどんのようなものをすすり込んだり、ひも状のグミやポッキーのような細長いお菓子を端からたぐり込んだりしてみましょう。
お菓子を端から唇でたぐり込んでいって、誰が一番早く口の中にお菓子を全部収められるかを競ってみるのも楽しいでしょう。
これもちょっとお行儀が悪いかもしれないのですが、お家の中ならOK! ってことにしましょう♪
吹く
「話す」とは、肺に吸い込んだ空気を、「息」として吐き出したものを、声帯で震わせて、口腔内で微妙な音の変化をつけて、口から送り出す作業です。
従って、「吹く」ことで呼気のコントロールや口腔内の形・動きを操作する練習をすることも、発声のためのとても大切な練習になります。
風車やシャボン玉を吹いたり、リコーダー・ラッパ・鍵盤ハーモニカなどの楽器を吹き鳴らしたり、ストローでコップの中をぶくぶくしたり、思いっきり吹いたり、ソフトに吹いたり・・・
対象物に応じた力加減を練習しながら、いろいろなものを吹いてみましょう。
こちらの記事↓ でご紹介している遊びも「吹く」練習にお勧めです。
吸う
口の中に何かを吸い込み、それが一気にのどの奥に流れ込んでしまわないように口の中に留めておく動作は、鼻腔や咽喉の繊細な動作の練習になります。
- ストローでジュースを飲む
- ストローで水を吸い込んで飲み込まずにペッと出す(ゴックンのコントロールが上達した子向け)
- 粉末状のラムネや砂糖をストローで吸い込む(うまく吸わないとむせます、呼吸器系の弱さのある子にはご注意)
- ストローでティッシュを運ぶ(ティッシュを吸いつけるイメージ)
- 太いストローで吸う(太くなるほど難しくなります)
などなど。
飲み込む
口の中に入れてよく噛んだ食べ物を、最終的にゴックンと食道に送り込む動作です。
気管に間違って入ってしまわないように、のどの奥の弁が活躍してくれていますが、これも、呼気を効果的にコントロールする動きにつながります。
落ち着いて飲み込む、飲み込みやすくなるようによく噛んで小さくする、といった日常動作を大切にしましょう。
変顔遊び
顔全体を大きく動かす練習です。
お勧めは、大人向けの美容・小顔体操や、シニア向けの誤嚥防止体操などを、大人がやってみせることです。
こうした体操をすると、たいてい “変顔” になりますので、小さなお子さんはキャッキャと大喜びしてくれます。
一緒に笑い合うだけでも心の育ちにとても良いですし、笑うこと自体も呼気や口・表情を活用するため、お話の力の土台になります。
大人の表情に注目することで共感力やコミュニケーション力にもつながり、もしお子さんが自然に変顔を真似ようとしたならば、表情の模倣の素晴らしい練習です。
ただし、表情を真似させようと強いる必要はありません。
大人が変な顔をしているのが楽しくて、思わず自分も真似したくなっちゃった!という時だけ、真似してくれたら、それでOKですよ(^ ^)
ついでに大人も小顔になれるかも!?
こうした動きがたくさんできるように、日常生活の中で、食べ物やおもちゃで工夫してみてくださいね。
明日は、口の動き以外の働きかけについてご紹介します。
本日は以上です。
それでは、また。
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