684-1 氷山モデルと、自閉症の人のこだわりの量と質
「氷山モデル」という考え方があります。
生活上の課題となっている部分は海面から上に出ている「氷山の一角」であり、その要因となる本質的な部分は海の下に沈んでいるのだから、水面下の要因にこそ着目して支援を考えよう、という視点です。
氷山という表現は、表面に見えている部分はほんの一部で、見えていない部分のほうがはるかに大きいことを示唆しています。
支援においても、表面的な課題にとらわれ過ぎず、見えない部分を汲み取ることが大切です。
さて、以前、自閉症児・者の支援に詳しい先生から、「自閉症の人が持つこだわりは、”量” は変わらない。”質” を変えていく、社会的に認められるこだわりを増やしていくことが大事」と教わったことがあります。
684-2 削るのではなく沈める
このお話の「量は変わらない」というところが、氷山モデルでいう「氷山」の扱いにも通じるように思います。
海面から出ている部分が問題行動だとしたら、この部分を削り取って問題行動を治そうとするのではなく、環境(=海)を変えて、氷山を沈めていく、と考えてみてはどうでしょうか。
周囲には社会的に問題のある行動に見えているとしても、その行動はその人にとって大切な氷山の一部です。
その人の一部を、他人が外部から削り取ってしまうようなことは、本来は必要のないことだと思います。
環境調整によってその人の問題行動がなくなったとして、それはご本人の特性が減った・治ったというものではなく、氷山がいい感じに沈んだということです。
684-3 いい感じに沈んでいられる居心地の良さを模索しよう
定型発達の、社会的に大きな困りごとなく過ごしている子供たち大人たちも、要するに「いい感じに沈んだ」氷山として過ごしているということなのでしょう。
誰でもこだわりは持っているし、ときには困ったことも起こります。
海に浮いている氷山が、海の揺れに応じて、浮いたり沈んだりする度合いが変化するというだけです。
無理して自分を・子供たちを・誰かを変えようとしなくても良いのです。
もしある人に変化が起こるとしたら、それは誰かが強制したものではなく、その人自身の自発的な行動によって起こったことでありたいものです。
ご本人の自発的な行動を受け止めつつ、その人が居心地よく過ごせる環境を探していく、その人の氷山がちょうどよく沈んでいられる海水濃度を探していく。
そんな生き方を模索していくのが、教育・療育の力ではないかなと思います。
本日は以上です。
それでは、また。
いつもあなたに明るい風が吹きますように。