男の子が保育園に行きたくなかった理由とは
ある保育園でのこんな素敵なエピソードを伺いました。
4歳の男の子が、突然「保育園に行きたくない」と言い出したそうです。
理由を聞いてみると、「A君がオンナフクだって言うから」。
「オンナフク」とは、「女の子の洋服」のことです。
この男の子は、ご親戚からのお下がりの、女の子用のお洋服を着て登園していたのだそうです。
親御さんは、できるだけ男女どちらでも着られるような色・デザインを選んで着せていたそうですが、濃いピンク色のシャツが、A君にとっては「オンナフク」に見えたらしいのですね。
そこで、ご家庭では、ひとまず青い服を着せて、「これでもうA君も何も言わないよ」とお子さんをなだめて登園させ、先生にその件を報告したそうです。
保育園の先生方がとった対応は
すると、先生方は、、、
女性の先生は、青・茶・黒といった、いわゆる男性らしい色の服を。
男性の先生は、赤・ピンクといった、いわゆる女性らしい色の服を。
それから一週間以上、ずっと身につけて保育をされたそうです。
お着換え遊び
また、「お着替え遊び」を取り入れて、キラキラ・フワフワしたスカートやリボン、ビーズや銀紙で作ったティアラ、シルクハットやスーツの上着のような衣装を用意されました。
男女どちらのお子さんにもさりげなく身につけさせ、みんなでドレスアップして楽しみました。
男性の先生も率先してスカートを履いたりリボンをつけたりして輪に入りました。
「男なのにリボンつけておかしいよー!」
笑いながら出てくるこんな発言には、先生が「ぼくもつけるよ。似合うでしょう?○○君もつけてみようよ」などと、さりげなくかわします。
嫌がる子には無理強いせず、離れたところから見ていても良いし、別の活動をしていても構わないことにします。
様子を見ながら時々そっと誘うと、少しずつ参加する子も出てきます。
お着換え遊びの結果
この「お着換え遊び」、プリンセス好き・おしゃれ好きの女の子たちは熱狂的に喜びました。
最初はふざけ合っていた男の子たちも、そのうちリボンやスカートをつけて、ニコニコして楽しみ出したそうです。
こんな取り組みを通して、「オンナフクなんておかしい」といった発言は全く見られなくなりました。
男の子がピンク色の服を着ていたり、女の子が青い服を着ていたりしても、誰も何も言わなくなりました。
男女についての理解の深まり
子供たちが性別を理解するようになり、男女それぞれでグループを作って遊ぶようになると、こういうことが時々現れます。
「オンナフク」と言った冒頭のA君も、決して悪いわけではなく、彼は彼なりに、自分の「男女の理解」を表現していただけだと思います。
そもそも、色に性別はありません。
女の子の色、男の子の色、といった観念は、なんとなく一般的に醸成されてはいますが、正解とも間違っているとも言えないものです。
ピンクが好きな男の子がいたっていいし、ピンクなんて絶対着ない、という男の子がいたっていいですよね。
今はファッションや性別についての考え方が非常に柔軟になってきています。
色だけでなく、女性の服を着ることを好ましく思う男性や、男性らしくふるまうことが心にかなう女性、心と身体の性別が一致しない人など、さまざまな人と出会うことがあるでしょう。
そんな場面で子供がどうふるまうかは、「保護者や身近な大人がどうふるまってきたか」をストレートに反映します。
多様な人のあり方を受け止める
こちらの保育園での働きかけは、多様な人のあり方をどんな風に受け止めるか?ということを、自然に伝えられた好例だと思います。
冒頭のA君に、「そんなこと言わないよ。男の子がピンクを着たっていいんだよ」と言葉で教えることもできたでしょう。
ただ、それだけでは、4~5歳の子供たちに実感として掴んでもらうのは難しいと思います。
言葉で指導されたA君は、お友達を「オンナフク」と正面からいじめることはしなくなるでしょう。
でも、心の奥底では「でもやっぱりピンクなんておかしい」と思い続けるかもしれません。
それもA君の考え方として受け止めてあげるのももちろん一つの道です。
ただ、これからの広い世界を自由に泳ぎ抜いていくためには、もう一歩進んだ「多様性に対する寛大な心」を育ててあげる方が、より良い働きかけといえるのではないかと考えています。
自分と同じところも、違うところも
自分とは違う好み、考え方、生き方を持っている人を素直に受け止める心を持っている子供たちは、
自分の周囲の友達には、自分と同じところももちろんあるけれど、自分とは異なるところもあって当然
そんな素直な目で、さまざまな友達を自然と受け入れ、仲間として見つめる目も持つようになります。
この保育園で、「オンナフク」の考え方を超えられた子供たちも、きっとそんな目を育み始めていることでしょう。
わたしたち大人も、自分の周囲の仲間たちを、素直に受け止める心を磨いていきたいものですね。
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