678-1 ご褒美方式はアリかナシか
具体物を報酬として課題に取り組ませることの是非について考える機会がありました。
これをやったら〇〇をご褒美にあげます/これをやらなければご褒美はもらえません
子供たちにこうした条件をつけて課題に取り組ませることについては、先生によってご意見が違います。
ご褒美方式は子供の主体性の育ちを妨げ、ご褒美がなければ何もできない人にしてしまうから絶対にダメだと言われる方もいらっしゃれば、ご褒美方式を理解することが成人後の暮らしを考えるための重要な目標となると言われる方もいらっしゃいます。
一般的な教育場面では、社会的報酬(他者に認められることが嬉しいからやる)や、本人の興味関心(自分がやりたいからやる)によって課題に取り組ませることが理想である、とされることが多いように思います。
ご家庭でのしつけにおいても、報酬がなければ動かない我が子に対する悩みをちらほら伺います。
ということはつまり、親御さんはご褒美方式をあまり良いものではないと感じているということですね。
678-2 ご褒美方式の活用例
たとえば自閉症さんには、他者に関心が薄いため褒められても別に嬉しくない、自分の好きなものは徹底的に好きだけれどもそれ以外のものは一切関心がない、といったタイプのお子さんがいます。
現状では、そうした子供たちには、残念ながら大人の強制力を持って課題を遂行させることも珍しくありません。
やりたくもないことを無理やりにやらされる経験は子供たちの心を深く傷つけます。
嫌なことを忘れにくい自閉症さんの特性とあいまって、ひどい場合は将来的な行動障害を引き起こす要因にもなります。
こうしたお子さんには、社会的報酬への喜びを育みつつも、早い段階でご褒美方式をほどよく取り入れることが効果的だとする実践が多数あります。
また、ご褒美方式の因果関係を理解しておくことは、社会生活を営む上でも役に立ちます。
(賃労働という社会構造はまだ当分は継続するでしょうから)労働の対価として賃金を受け取れるということを理解していないと、仕事をしてお金を稼いで一人で生きていくという人生を組み立てられません。
ご褒美方式は、地に足の着いた生活を支えるツールにもなるということですね。
678-3 理想を見つつ現実に向き合う
なんというか、言葉を飾らずに言うと、即物的なご褒美によって行動するのは質が低く、社会的・自発的な喜びによって行動することこそ人としてあるべき姿である、という論が主流になっている気配が世の中にあるような気がしませんか。
社会的報酬に対する感度が高く、興味関心の幅が広がりやすい子供たちの場合はそれで良いでしょう。
一方で、そうでない子も確実にいるわけですよね。
自分なりの理想を持つことはとても大切ですが、理想だけを見ていると、その理想に当てはまらない子供たちや、家庭や学校でそうした子たちと向き合っておられる方々を、無自覚に否定するような言動を取りかねません。
自分自身の行動を振り返り反省しつつ、何事も、ある一面を見たら、その対極を見ることを忘れずにいたいものだと、改めて思ったことです。
本日は以上です。
それでは、また。
いつもあなたに明るい風が吹きますように。