我が強く思い通りに動いてくれないお子さん
メール講座(※現在は募集停止中)を受講されているTさんから、このようなご質問がありました。
初めまして。
いつもこどもとのかかわり合いについてたくさん勉強させていただいております。
ためになる情報ありがとうございます。
本日は困っていることがありメールさせていただきました。
私には、まもなく3歳になる療育中の息子がおります。
発語は遅かったですが今はよく喋るほうで、理解も割とあると思います。
暗記に強くひらがな読みなどが得意です。
初めて病院にかかる前から、息子の我の強さが非常に気になっていました。
(たとえば頭に思い描いたことができないと強く取り乱すなど)
とにかく自分のペースが強く、リードすることに大変困難をきたします。
たとえば親戚宅から帰るとき、庭先で遊びたがってなかなか帰れない。
理由を説明し納得してもらいたいと思うのですが届きません。
(私の説明が下手なのもあるでしょうし本人の意思も強い…。)
もしくは、我が強いというよりも次の行動にうつるまでに目移りしてしまいなかなか先に進まないのかもしれません。(目に入ると取りつかれがちです)
なるべく予測できるときは事前に段取りを説明するように心がけていますが、そうはできないこともあります。
なるべく尊重してあげたいと思いますが、ルールや制約があり叶えてあげられないときもありますよね。
時間にも限りがあります。(本人にその概念が伝われば良いのかもしれませんが…)
そしてその場に出くわしたとき説得を試みても、息子はフラフラしていますし長いこと話は聞いてくれません。
言いたいことが伝えられず苦しい毎日です。
何かいいアイデアがあったら知りたいと切に悩んでいます。
私もこれから過去のアドバイスをよく読み勉強して参りたいと思います。
自分の意志をしっかり持っている、頼もしいお子さんですね。
今はまだ、ご本人も自分の気持ちをうまくコントロールできなくて苦しいでしょうし、親御さんも辛さを感じる時がおありかとお察しします。
きっとTさんは毎日お子さんの気持ちに寄り添って、お子さんの思いを受け止めてくださっているのでしょうね。
我が強いお子さんへの関わり方の例
さて、今回のご相談のお子さんは、まだ3歳になるやならずやといった年齢です。
この年頃のお子さんに、気持ちや行動のコントロールを教えるのは、なかなか難しいことも多いだろうと思います。
こうしたとき、大人はついつい、子供を自分の思い通りに動かしたくなってしまいますが、関わりの大原則は、子供の主体的な行動を引き出すことを目指す、ということです。
日常生活の都合もいろいろある中で、難しい場面もあるのは重々承知です。
数ヶ月単位で一歩ずつ進むような気持ちで、じっくり腰をすえて働きかけていきましょう。
視覚に訴える
こちらのお子さんは「聞く力」よりも「見る力」が強いようです。
その力をぜひ活用しましょう。
外出する時には帽子を見せる、家に入る時には室内のお気に入りの場所の写真を見せるなど、次の行動をイメージできるような具体物・写真・絵カードなどを見せてあげるといかがでしょうか。
目に入る情報を整理する
見る力が強いということは、目に入るものに引っ張られやすいということでもあります。
Tさんもお書きのように「目に入ると取りつかれがち」ということになるわけですね。
気持ちの切り替えを促すには、できるだけ余計なものが目に入らないようにしましょう。
たとえば庭で遊びたくて気持ちを切り替えられない時は、窓やカーテンを閉めたり、部屋を移動したりして、庭が見えないようにします。
お子さんの気を引くようなもの(おもちゃ、テレビ、光るもの、揺れるもの、音が出るものなど)が目に入らない静かなスペースが理想です。
働きかけの3つのコツ
庭に出たくて騒いでいる場合は、騒ぎが収まるまで声をかけずにじっと待ちます。
気持ちが鎮まってきたら、落ち着くことができたことを静かに褒めます。
「落ち着けたね」「クールダウンできたね」など、言い方を決めて毎回同じ表現をすると良いでしょう。
その後、ご自宅の写真カードなどを見せて、「家に帰ります」と伝えます。
声かけはシンプルに言葉数を少なくするのがコツです。
- 余計なものが目に入らない場所で
- 気持ちが鎮まるのを待ってから
- シンプルな声かけ&視覚的サポートをする
この働きかけを続けてみてください。
「やめること」を練習する
これをやりたい、今していることを続けたい、という気持ちを切り替えるには、「次の行動に移る」前に、「今していることをやめる」という段階が必要です。
大人はつい、「次の行動」を真っ先に促しがちですが、その前に「今していることをやめる」働きかけを丁寧に行ってみましょう。
- 「○分になったら」「長い針が6になったら」などご本人にわかりやすい表現で事前に終了時刻を約束する
- 「あと○分で終わりだよ」などと徐々に終了を予告する
- タイムタイマーやアラームで終了を示す
- 好きな絵と「おしまい」の文字を書いた「おしまいのカード」を見せる
(最初はピンと来ませんが、物事の終了時に毎回見せていると少しずつ意味が伝わります) - 遊んでいる道具などを一緒に片付けて見えなくする
- 「これで終わります」など、おしまいの挨拶を大人と一緒に行う
など、など。
気持ちの切り替えにはさまざまな方法が考えられますので、お子さんにとって伝わりやすい方法を探ってみてください。
今していることをやめることができたら、大いに褒めてあげてくださいね。
たとえば今の遊びをなかなかやめられない時、なんとかして室内に入れようとして、「○○のビデオを見よう」などと、より興味の強いもので気を引いて大人の思い通りの行動を促すことがあるかもしれません。
これでも「室内に戻る」という目的を達成しているように見えますが、お子さんにとっては、今している遊びを途中で放り出して新しい遊びについていったようなもので、「やめる」「気持ちを切り替える」というステップを踏むことができていません。
この方法は一種の劇薬で、どうしても必要な時には有効な手段ですが、日常的にはできるだけご本人の意志で「今していることをやめる」行動をとるように働きかけていくと良いでしょう。
別の方法で発散する
今回のご相談からはそこまでは読み取れませんが、たとえば庭で遊ぶことに極端にこだわる場合、水や砂に触りたい、庭にある特定の玩具で遊びたいなど、何らかの欲求を満たしたがっている可能性も考えられます。
その場合は、時間に余裕がある時に、思う存分お子さんの好きな遊びをさせてあげて、欲求を満たしてあげることも大切な関わりです。
「待つ」ことを練習する
生活のさまざまな場面で、「ちょっとだけ我慢する」「相手のタイミングを待つ」練習を取り入れるのもお勧めです。
たとえば、遊びの中で、ほんの一瞬でも「待つ」ことを取り入れてみるのも一つの手です。
以下の記事を参考にご覧ください。
うまい落ち着きどころを探ってみて
ご相談のお子さんは、自分のやりたいことをトコトンやりたい気持ちが強いのでしょうね。
規則を守ったり、集団生活をスムーズに送ったりといった観点からははみ出しがちな部分もあるかもしれませんが、強い集中力で自分の興味関心を追求できる、素晴らしい個性でもあるでしょう。
日常生活のさまざまな場面で「ちょっとだけ我慢する」「ちょっとだけ譲る」体験を積み重ねてもらいつつ、お子さんがやりたいと感じることを思う存分に堪能する時間も取りつつ、なんとか社会の枠組みの中でうまいこと着地できる落ち着きどころを探っていけるといいのかな、などと思います。
Tさんとご家族にいつも明るい風が吹きますように、心から応援しています。
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