保育園の手作りテーブル
拙宅の子供たちが通っている保育園に、ある日突然、素晴らしいテーブルが登場しました。
白樺の脚がついていて、天板は大木の一枚板です。
天板には自然な節穴がそのまま開いていて、これがまたなんとも言えない風合いです。
これ、なんと用務員のHさんの手作りなんです。
園にある木製のおもちゃは、ほぼすべてHさんの手作り。
どこの園にもこういうゴッドハンドが一人くらいいますよね(^ ^)
穴の開いた天板
天板の穴は、大人の目からは素敵でおしゃれなデザインに見えますが、子供たちの目にはまた違って写っているようです。
このテーブルを見るなり、
「穴だ!」
「穴が開いてる!」
の大合唱。
穴に手を入れる子が続出しました(わたしも入れちゃいました笑)。
穴があるから・・・
さて、ここで一歩視点を変えて考えてみましょう。
子供たちは、なぜ穴に手を入れたのでしょうか。
答えは 「そこに穴があるから」。
・・・どこぞの登山家が言いそうなことですが、これは真実です。
「穴があるから」人は手を入れたくなるんです。
道具が動作を誘い出す例 1
人間の動作は、道具によって誘い出されることがあります。
たとえば、1~2歳くらいの赤ちゃんが大人の真似をして携帯電話を耳に当てる動作をしているところを見たことがありませんか?
本物の携帯電話だけでなく、積み木やブロックなどを携帯に見立てて耳に当てている子もいますね。
ところが、何も持たずに手だけを耳に当てている赤ちゃんはほとんどいません(幼稚園の年長さん~小学生くらいになるとそういう子も出てきます)。
道具が動作を誘い出す例 2
また、幼稚園~小学生くらいの子が、傘やホウキなどを振り回してみたり、高いところを叩いてみたり、排水溝に突っ込んでみたりしている様子を見たこともあるのではと思います。
というか、子供に長いものを持たせると、大体はこうなりますよね(^ ^;)
ここでも、素手を振り回したり高いところを叩いたりしていることはほとんどないでしょう。
長いものを持ったから、つい振り回したくなる、溝に入れてみたくなる、という気持ちが湧くのです。
穴も同じで、穴には何かを入れてみたくなるものなんです。
道端の小さな穴に石を詰め込んだり、塀のすきまに指を突っ込んだり。
冒頭でご紹介した保育園のテーブルに手を入れてみた子供たちもしかりです。
道具で動作が誘い出される、ということのイメージがなんとなく伝わったでしょうか。
動作を支援のヒントに
他にも、スイッチを押してみたくなるとか、キラキラ光るものを見たくなるとか、動くものに目がいくとか、よく観察してみると、道具に誘い出された動作はたくさんあるものです。
ただのいたずらと思えば見逃してしまうような動作ですが、どのような動作にも支援のヒントが隠れています。
どんな動作を好むかはお子さん次第ですが、保育園の子供たちがほぼ例外なくテーブルの穴を意識した行動を取ったことからもわかるように、多くの人の気持ちが向きやすい仕掛けというものも確実にあるのですね。
以前、発達障害の子供たちの学習支援ツールを製作・販売されている方とお話しした時、
道具はきれいに作らないと、子供たちは使ってくれない
とおっしゃっていました。
これもある意味で、道具が動作を誘い出す一例ですね。
この力を活かすと、発達に偏りのある子供たちの支援にも大変役立ちます。
自然と手を出したくなる仕組みを工夫しよう
どんな子にも、自然と手を出したくなる、自然に目を向ける道具というものがきっとあるはずです。
特に、言葉が伝わりにくい、ちょっとした刺激ですぐに気が散ってしまうといった様子を見せる発達初期のお子さんには、本能的に手を出したくなる仕組みを活かした支援が効果的です。
鉛筆のなぞり書きができない、文字どころか簡単な図形も描けない、といったご相談の多くも、まずはこの力を活かして、鉛筆よりも一つ手前の練習から入るとうまくいくことがあります。
お子さんが自然とやっていること、楽しんでいることを参考にしながら、「どんな道具なら、自然と注目してもらえるか?」という目線で、支援の糸口を探してみてくださいね。
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