722-1 大人の真意は伝わっているか?
育児・療育・教育の現場では、子供たちがその場にふさわしい行動を取れないことで大人が困る、ということがよくあります。
これを、子供が言うことをきかないと捉えるのではなく、大人の真意が伝わっていないと考えてみると解決することがあります。
以下、代表的な3つの事例を書いてみます。
722-2 何かを伝えるときに気をつけたい視点3つ
1.「何をすればいいか」を明確に
「~~してはいけません」という否定の指示ではなく、「~~しましょう」という肯定の指示で伝えるほうがわかりやすくなります。
例:
廊下を走らない→廊下は歩きます
否定の指示だと、「では代わりに何をすればいいのか」が伝わりません。
その場に望ましい行動を伝える形で指示を出すとスムーズです。
「~しない」という指示だと、とっさに「嫌だ」「やりたくない」「そんなのムリ」という反発の反応を引き出すこともあります。
そんな場合にも、「~する」という形ならば、抵抗を生み出さずに指示を受け取ってもらいやすくなります。
例:
おしゃべりをしない→お口チャック
暴飲暴食しない→おやつには〇〇を〇g食べる
2.その子が受け取りやすい表現で
音声指示が聞き取りにくい子、イラストだとわかりやすい子、複数の指示を覚えておけない子などがいます。
- 言語表現はできるだけ簡潔に
- 文章ではなく箇条書きで
- 一斉指示だけでなく個別に指示
- 口頭だけでなく文字に書いて提示
- 伝えることは一度に一つだけ
などなど。
その子にとって受け取りやすい表現を工夫しましょう。
3.身体が動きやすい方法で
その場に望ましい行動を頭ではわかっていても、実際にそう動けない子もいます。
たとえば廊下に行列して順番を待つ場面で、おしゃべりせずにじっと立っていることが難しいときは、本を読む、あやとりをするなど、一人で静かに取り組める活動をしながらだと待ちやすくなります。
別の行動をとることが、自然とその場に望ましい行動になるように、アプローチの導線を工夫していきましょう。
たとえば重力を感じる力が弱く姿勢を維持できない子、気が散りやすくじっとしていられない子などには、もう少し動きのあるアプローチが向いています。
例:
大人と手をつないで尻相撲
(背中合わせに立って手をつなぎ、お尻で軽くポンポンと交互に押し合う)
相撲の勝負をするわけではなく、お尻で押し合うラリーを楽しみます。
押し合う動作を通して全身に振動を感じられるため、姿勢を維持しやすくなります。
手をつなぐことで立位の維持もスムーズになります。
1の項目の例で挙げた「お口チャック」の次のステップとしてもこの考え方を応用できます。
「お口チャック」でもしゃべるのが止まらない子は、「口を動かさずにいる=動きがゼロの行動をする」ことは難しいのかもしれません。
より身体が動きやすい方法、すなわち、積極的に「しゃべること以外の行動を取る」指示に切り替えるのも一つの手です。
たとえば以下のようなアプローチが考えられます。
例:
無言のまま大人の動作を模倣するゲームをする
・唇を閉じたまま頬を膨らませて音を立てずにモグモグさせる
・大人が出した手の形(グーチョキパー、指を何本か立てる、影絵、etc.)を真似る など
お手伝いをしてもらう
・職員室まで何かを取りに行く
・プリントやノート等を回収・配布する など
722-3 答えは自分と相手の間にある
もちろん、子供に指示が伝わらない状況はこれだけがすべてではありませんし、アプローチ方法もこれだけではありません。
関わる人(大人)、関わられる人(お子さん)、その場の状況・環境に応じて、アプローチ方法は無数に考えられます。
大原則は、目の前のお子さんの行動をよく見つめることです。
“答え”はすべて自分と相手の間にあります。
今回の記事も、これが絶対の正解ではなく、あくまでもヒントだとお考えください。
あなたとあなたが関わる方の間にある”答え”を探すヒントになれば幸いです。
本日は以上です。
それでは、また。
いつもあなたに明るい風が吹きますように。
- 療育のセカンドオピニオンが欲しい方
- 一般的な療育支援分野とは違う角度からアドバイスが欲しい方
- 漠然とした不安や言葉にしづらい”何か”があってクリアにしたい方
ぜひ一度「オンラインセッション」にお声掛けください。
育児・療育は親子の育ち合いです。
お子さんのお話だけでなく、親御さんのお話を伺うことも大切な時間です。
うまく書けない・しゃべれないと思う方もご安心ください。
ゆっくり丁寧にあなたの中にある”何か”を引き出します。