628-1 努力の栄光の隣には
前回、わたしたちは目標に向かって努力して成果を上げることが望ましいと刷り込まれている、と書きました。
努力して何かを勝ち取ることは確かに素晴らしい体験で、それを否定するつもりはありません。
ところで、努力して何かを得る栄光のすぐ隣には、努力したけれども思い通りのものは得られなかったという無念が潜んでいます。
どちらかというと、後者の体験を持っている人のほうが多いのではないでしょうか。
だって、競争して1位を取れるのはたった一人だけなのですから。
それを自分にとって必要な体験として昇華できれば問題ありません。
十分な自尊感情を備えている人、信頼できる人が身近にいて支えてくれる人は、どんな体験でも自分の糧にできる人が多いように思います。
628-2 「うまくいかない」を定義しているもの
一方、努力してもうまくいかなかったことが、心の傷になって残る人もいます。
そういうときは、一歩引いたところから「うまくいかない」の定義を見直してみてはどうかと思います。
「うまくいった」「うまくいかなかった」は、環境によって定義される部分も大きいものです。
今自分がいる環境ではうまくいかないことも、別の環境ではうまくいったり、もっと自分に合うものが見つかったりします。
テストで100点を取れなかった・・・
筆記試験ではなく口頭試問ならうまくいくかも?
教科書を暗記するような試験は苦手でも発想力を問う試験は得意かも?
そもそもテストが難しすぎるのかも?
スポーツで優勝できなかった・・・
別の競技ならうまくいくのかも?
そのスポーツによって培われた体力やさまざまなスキルが他の場面で他の人を圧倒するかも?
など、など、、、
628-3 努力の大事さとセットにして提示したいもの
どこか一つの場所で努力をし続けて最終的に成功する人もいるし、そういうやり方が向いている人もいます。
と同時に、自分に合った環境に場所を移す、関わり方を変えるという方法もあって、そのやり方で初めて自分の能力をのびのびと発揮できる人もいるのです。
育児・療育・教育の現場でも、子供たちに成功体験を体感してもらうために、一人ひとりに合った課題を工夫して提示し、彼らが自分の力で課題を乗り越え、立ち向かっていく力を育もうとします。
そのときにはぜひ、「努力してもうまくいかないこともある」「そういうときは環境や関わり方を変えるという方法もある」という考え方もセットにして提示してあげてほしいなと思います。
それも一つの生きる力、一つのレジリエンス(立ち直る力)なのではないかなと思っています。
本日は以上です。
それでは、また。
いつもあなたに明るい風が吹きますように。