「療育・育児の支援現場や教育現場で働くとはどういうことか、一言で表現してください」

 

 

 

と言われたら、あなたなら何と答えますか?

回答者の数だけ答えがあると思いますが、私の答えはこうです。

 

 

 

 

「すべての人を信頼すること」。

 

 

 

 

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療育や教育の現場では、実にさまざまな人とやりとりをしますね。

自分と話が合って穏やかにやりとりを進められる人が相手ならば何の問題もないのですが、そういう利用者・児童生徒・保護者ばかりではありません。

 

障害特性によってもともとコミュニケーションに難しさを持っている人。

あえて人を傷つけるようなコミュニケーションを取る人。

療育・育児に疲れて余裕をなくしてしまった人。

いろいろなことに自信をなくしてしまった人。

不安や悩みでいっぱいになり、つい他人に当たってしまう人。

 

本当にいろいろな人がいます。

 

職員や教員は、どんな利用者・児童生徒・保護者と接する時も、相手の感情に呑まれず、穏やかに客観的に接することが求められます。

とは言え、実際にそれができている人がどのくらいいるかな?というと・・・

多くの人は、自分の調子の良い時はそこそこ冷静に対応できるけれど、うまくいかない時は全然うまくいかない、という感じではないかな~、と思います(^ ^;)

私自身も、常に自分を振り返り反省しながら、山や谷を乗り越え乗り越え前進する毎日です。

 

 

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私はいっとき、人と関わる仕事がいやになってしまったことがありました。

相手から冷たい言葉をぶつけられたり、自分が思うような成果を出せなかったり、説得や自分の思いを伝えることがうまくいかなかったりして、自分の思い通りにならない不満でいっぱいになって、仕事を続けるモチベーションが消えてしまったのです。

 

これではどうしようもないと思って、療育とは関係のない、ビジネスやコンサルティング、整体、武道、エッセンシャルオイルなど、さまざまな世界の先生にお会いして勉強してきました。

何年もかけて勉強しながら、つくづく気づいたことがあります。

 

 

私が人と付き合う時の方法は、完全に「自分の立場」に立ってものを見ていたのだなあ、ということです。

 

 

冷たい言葉をぶつけられて「自分が」嫌な気持ちになった。

「自分が」思うような成果を出せなかった。

「自分が」目指す結論に向けて説得できなかった。

「自分が」思うことをわかってもらえなかった。

 

自分が、自分が、自分が、

すべて「自分」です。

たとえば私に冷たい言葉をかけた相手がどんな気持ちだったか、その相手はどんな人生の背景を持っていたか、なぜその言葉をかけるに至ったか、そこに至るまでの私の行動はどうだったか、その言葉をきっかけに相手の人生がどう変わったか、そういうことを一切考えずに、ただ自分の不快な気持ちだけを意識に上らせて、勝手に苦しんでいたのです。

 

そんな状態で誰かのサポートをしようなどとは、あまりにもおこがましいことだったと、つくづく恥じ入りました。

 

 

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そんな私が、どうにかして「自分の立場」の枠を出ようともがいていた時、出会ったのが「タイヘキ」という考え方です。

タイヘキに出会ったことで、冗談でなく私の人生は変わりました。

 

 

 

私たちは誰でも、自分の心の中・頭の中から外に出ることはできません。

私たちが社会生活を送る時は、いってみれば、自分の心の中にある壁に囲まれて、壁ごしに人とやりとりしているようなものです。

この壁があるおかげで、私たちは一人ひとりの個性や信念を持つことができますが、同時に、排他性や偏見も生まれます。

タイヘキは、この壁を乗り越え、相手の壁を理解するためのツールです。

 

タイヘキは一種の人間分析法で、人が無意識に心身で体現しているさまざまな事柄を10種類に分類したものです。

性格・思考のクセ・行動のクセ・話し方・体格・表情・服装の好み・歩き方・ストレス解消法・文章の書き方・・・

などなど、さまざまなことがタイヘキによってわかります。

 

タイヘキがわかっていると、今ご相談を伺っている方が、どんなことにつまづきやすいか、どんな説明を求めているか、こちらがどんな言い方をすれば伝わりやすいか、どうすれば安心できるか、などがわかります。

また、お子さんやご家族・パートナーのタイヘキもわかっていると、家族同士の関係性や、家族間で起こりやすいトラブルなどが予想でき、しかも大体は当たります。

 

私にとっては、タイヘキによって人との接し方がわかるだけでなく、その人の人生を信頼できるようになったことが一番大きな学びでした。

今まで、自分には理解できない、意味がわからない、あり得ない、とまで(!)思っていた他者の言動が、急にはっきりと呑み込めるようになり、受け止められるようになったのです。

今までならばネガティブに受け止めるか、無理をして理解しようと努めるか、どちらかでしたが、タイヘキを知ったことで、全く無理なく自然に「この人は○○のタイヘキだからこうなんだ、素敵だな」と思えるようになりました。

 

「素敵だな」は、ちょっとピンと来ないかもしれませんが、本当にこうとしか言いようのない気持ちです。

自分にはない視点・視野・視座で、自分とは別の世界を生きている人。

自分とは全く違う時間を生きてきて、その人だけの人生経験を持っている人。

そのことがしみじみと実感されて、その人が持っている過去と未来の歴史に、心から敬意を表したい、という気持ちになるのです。

タイヘキの考え方を通すことで、人の人生を今までよりも立体的に捉えられるようになった感じです。

自分にその人の考え方が納得できないからといって悪い気持ちを持ったり分け隔てをしたりしていた私は、あまりにも世界が狭かった!

 

 

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こういう気持ちで人と向き合っていると、人間関係がどれほどスムーズになるか、想像してみてください。

こちらが基本的に動じないで平静でいるので、先方もつられて自然と穏やかになります。

先方がどんなにイライラピリピリしたり冷たい言葉をぶつけたりしても、こちらの気持ちが動かなければ、人間関係に影響はありません。のれんに腕押し、ぬかに釘、というやつです。このことわざはどちらかというと悪い意味で使われますが(^ ^;)、私は逆に良い意味で受け取っています。自分がのれんになっていれば、相手がどんなに力いっぱい迫ってきても自分には何の影響もなく、ひたすら寄り添うことができるのです。

 

相手のお話を伺っているうちに、その人の人生のストーリーが見えてきます。

どんな時でも自分の感情にいちいち邪魔されずにやりとりができると、不思議なことに、相手の思いや事情に「気づく」ことが増えてくるのです。

 

「この人は前からこういう態度をとっていて気になっていたけれど、お子さんの学校生活に不安があるからだったんだな。それでは、お子さんの生活のサポートの優先度をもっと上げよう」

「今、一瞬、雰囲気が強張ったのは、きっとこの言い方がよくなかったな。ということは、この話題にはこういう触れ方をせず、こういうアプローチをしてみよう」

「何度アドバイスを送っても実行していただけなかったのは、こういう表現をしていたのがよくなかった。この人のタイヘキは○○だから、こう書いても意味がなかったんだな。では、こう書けば伝わりやすいかな」

 

こんなふうに、先方がチラリと見せる言葉尻、仕草、表情、文章、などなどを逃さず捉えて、柔軟に対応できるようになります。

自分の立場へのこだわりがなくなると、心身がゆるんで視野が広がり、今までは気づけなかった情報がどんどん意識に流れ込んでくるのでしょう。

タイヘキを知ることで、ほんのちょっとしたことからキャッチできる情報量が圧倒的に増えるのです。

 

 

自分の立場へのこだわりを捨て、相手と自分の心の壁を乗り越える方法を知ってからは、人と関わる仕事の意味がもう一歩深いところからわかったような気がしています。

 

 

 

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療育・育児とは、大人という一人の人間と、子供という一人の人間が、お互いに向き合い、働きかけ合い、育み合う関わりです。

この時、大人も子供もお互いに自分の心の壁をへだててやりとりしていたのでは、真のコミュニケーションが難しいのは当たり前ですね。

まして、教師や支援者といった第三者がサポートすることの難しさは、、、

 

この難しさを和らげ、関わる人が全員で壁を乗り越え、成長するためのカギが、 「タイヘキ」 です。

タイヘキを通して人間関係を捉え直してみたい、仕事に活用したいという方は、こちらのページをご覧ください。

 

 

それでは、また!