食べることを面倒がる、
食べるのが遅い、
食べ物の好き嫌いが非常に多い、
食事中にだらしない座り方をする。
そんな様子を見せる子供たちに出会ったら、「ちゃんとしなさい」「早く食べなさい」と指導なさる前にぜひ一度、単なるわがままや食わず嫌いや怠慢ではないかもしれない、という視点で、お子さんの様子を見守ってみていただけないでしょうか。
発達障害のお子さんは、全身の筋肉を適切に働かせる力が弱かったり、筋力自体が育っていなかったりすることがあります。その場合、かむ力も弱く、給食に出てくる硬い肉や筋張った野菜などをかみ切れないことも出てきます。
たとえばその子が普段から、椅子に座っていると姿勢が崩れてきたり、机に上半身をもたせかけていることが多かったりする場合は、特にその可能性があるかもしれません。もしそうだとすると、そのお子さんは、椅子に座りつつ、箸を操作しつつ、口の中のものをかむ、という複雑な作業に苦労して、なかなか食事が進まずに困っているのかもしれません。
感覚過敏やこだわりの強さから偏食が見られることもあり、苦手な食材がドンとお皿に載っていると、ただでさえ苦労する食事がますます苦痛になってしまうことも。
給食が進まないために先生に注意されたり、友達に嫌な目で見られたり、といったことが続くと、食べること自体が嫌になってしまう可能性があります。そうなってしまっては、とても残念です。
こういったお子さんには、食材を柔らかく調理する、細かく切るといった働きかけで、少しでも食べやすくしてあげたいところです。が、給食室で個別に特別な働きかけを行うのが難しいこともあるでしょう。
そこで、給食の配膳ワゴンで、各教室に1本ずつ「キッチンばさみ」を配ってみてはいかがでしょうか?
各人への配膳のタイミングで、本人が食べにくいと思う食材を小さく切ってあげましょう。低学年では先生が切ってあげ、中学年くらいからは子供たちが自分で切っても良いでしょう。また、苦手な食材がある場合、小さく切ってほんのひとかけらだけお皿に盛ると、「こんな小さなかけらだったら食べられるかも」と意欲を持ってくれることがあります。
キッチンばさみの導入当初は、かむことに苦労しない子供たちでも、ふざけて細かく切りたがることがあるでしょう。その場合、何回かは希望通りにしてあげるのも良いと思います。先生が子供たちの状態像をよく確認して、「○○君はしっかりかめてるんじゃないかな?細かくする必要がある?」「ちゃんと考えてみてね」などと、その子に合わせた働きかけで、適切な食事の仕方を促していきましょう。
かむことが苦手なお子さんでも、将来的には自分で咀嚼できる力を育てていくのも大切なことなので、キッチンばさみ導入と合わせて、かむことの大切さを学ぶ学習時間を設けると良いでしょう。
大人が意識せずに行う動作の一つひとつに、大きな労力を必要としている子供たちがいるということをご理解いただきたいなと思います。
全員で無理なく楽しく食事をとれると良いですね!
それでは、また!