591-1 ▼ 病気を治さないH先生
拙宅の近所に、H先生という医師の個人医院があります。
小児科・内科の看板を掲げて、こじんまりと地域の人々を診ているお医者さんなのですが、この方が実になんとも面白い方なのです。
地域の誰に聞いても、「H先生は、とても良い人だけど、腕はね・・・」と言います。
医者としての腕は良くない、という意味です。
実際、彼の治療を受けても病状が回復しない人が一定数います。
そうした人たちが、より大きな総合病院にかかって、経緯を説明すると、総合病院のドクターたちが「ああ、H先生ね」と苦笑されるような、一種の名物先生です。
なぜH先生にかかっても病状が回復しない(ことがある)のかというと、H先生はごくごく弱いお薬しか出さないからです。
それで、患者さん本人の免疫力が負けると、ただの風邪のように見えていたものが肺炎にまで進行してしまうこともあったりするのですね。
591-2 ▼ 話をしに行く
総合病院のドクターたちは「ここまで進む前にH先生がもうちょっと強い薬を出してくれていれば、こうはならなかったと思いますけどね」などと言いながら、治療を進めてくれます。
受診する側も、「今回は具合が悪くて、H先生じゃ無理だと思うから、最初から総合病院に行くわ」などと言い合っています。
H先生のところで病気を治してもらおうとは思っていないかのようです。
それでも、H先生の病院に通う人は後を絶ちません。
それはひとえに、H先生のお人柄です。
地域の人は、先生と話がしたいから、彼のところに行くのです。
H先生は一人ひとりの話をじっくりと聞かれます。
高齢の方の、同じ話題を行きつ戻りつするような話しぶりにも、決してせかさず慌てず、目を細めてニコニコしながら、最後まで話を聞かれます。
お薬は出したり出さなかったりするようです。
591-3 ▼ 小さな灯火を
さて、こういうお医者さんの存在を、あなたはどう思いますか?
H先生のやり方を物足りなく感じる方もおられるかもしれません。
でも、H先生が穏やかに掲げておられる灯火が、どれほどこの地域を明るく温かく照らしてくれていることか、ちょっと想像もつかないほどです。
育児・療育という、大人たちと子供たちが行う日々の関わり合いも、こうした灯火を一つひとつ、世の中に点じていくようなものではないかと思っています。
肺炎に強めの薬を出すような、明確なエビデンスを持って関わる部分も、H先生のおしゃべりのような、一見すると何の役に立っているのかわからない関わり合いも、世の中にはどちらも必要なのですね。
本日は以上です。
次回の配信は4/11(月)です。
それでは、また。
いつもあなたに明るい風が吹きますように。
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