331-1 ▼ 人は嘘をつく
今日は、「言葉の使い方と、人への信頼感」について。
わたしは幼い頃、親(が代表する大人というもの)が嘘をつくわけはないと無条件で信じていました。
だから、親がそう言うのだからサンタクロースは実在するのだ、と信じていました。
ところがだんだん年齢が進むと、「サンタなんて本当はいないんだよ」という友達のささやきが耳に入ってきます。
わたしは強烈な衝撃を受け、周囲の大人に聞き込み調査をしたり(もちろん誰一人として明確な返答をくれませんでした)、書店や図書館に行ってサンタについての書籍(絵本しかありませんでした)を調べたりしました。
子供なりに執念を燃やして必死で調査して、どうやらサンタクロースはファンタジーの世界の存在らしいと結論がついたとき、わたしの中には深い失望が残りました。
サンタが実在しなかったからではありません。
大人たちが全員で自分に嘘をついていたとわかったからです。
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言わずもがなですが、大人の世界には本音と建前というものがあります。
明確に嘘はつかないまでも、表現を変えるとか、あえて言わずにおくとか、自分の言葉を微調整することは、ほとんどの方が自然とやっていると思います。
と同時に、子供たちには「嘘をついてはいけません」と教えることが多いですね。
嘘をつくのは良くないという価値観を教えることはとても大切ですが、わたしは個人的には、
「人は嘘をつくこともある」
「人の言葉には額面通りでないものが混じることもある」
ということも併せて伝えていくのが親切だろうと思っています。
331-2 ▼ 努力は必ずかなうのか?
たとえば世間でよく言われる「努力は必ずかなう」という言葉。
大人が子供を励まし、夢をかき立てるために言いがちな表現ですが、これってはっきり言って、半分は嘘だと思うのです。
もちろんこの言葉の全部が嘘ではないのですが、注釈を要する表現なのは間違いないでしょう。
だって、努力すれば全員がピカソやバッハやイチローのようになれるでしょうか?
努力をすれば全員がオリンピックで金メダルを取れるでしょうか?
金メダルを取れるのはたった一人ですよね。
もっと極端な話をすれば、努力すれば不老不死でいられるでしょうか?
そんなわけはありません、命あるものは必ず終わりを迎えます。
「努力は必ずかなう」という言葉を使うなら、カッコ書きの注釈が必要です。
言えるとするなら、「正しい方向に正しい方法で努力すれば、ある程度の進化発展は確実に見込める」、というくらいではないでしょうか。
たとえば大学受験です。
現状の受験システムなら、正しいやり方で勉強を継続すれば、偏差値を10くらいアップさせることはそんなに難しいことではありません。
「努力はかなう」というのは、こういう文脈の中での話ではないかと思います。
331-3 ▼ 言葉が自分と相手の世界をつくる
努力は必ずかなう、と思って頑張ったエネルギーは、(実際にかなえばそれはもちろん素晴らしいことですが、)もしかなわなかった場合、急転して大きな失望の方向に向かうかもしれません。
わたしたち大人が気軽に使う言葉によって生み出される、そういう小さな傷が、子供たちが世の中に相対するときの信頼感を少しずつ損なっていくように思うのです。
「努力は必ずかなう」が半分は嘘だとわかっていて、それでもあえてこの表現で励ますというのなら良いと思います。
わかった上で、意図をもって使う言葉には力がこもるからです。
そこまで深く考えずにこの手の言葉を使って、無自覚に嘘をつくような結果になってしまうのは、ちょっと残念だなと思うのです。
誰かに言葉をかけるとき、その言葉が自分と相手の世界をつくっていくことを常に忘れずにいたいなと思います。
サンタクロースが(少なくとも大人が描写してみせた通りの形では)実在しないとわかったあのときから何十年も経ち、今ではわたしも、サンタクロースというファンタジーを共有し合いたい大人の想いもわかるようになりました。
同時に、無自覚に自分の使っている言葉が誰かを傷つけていないだろうか?と、常に気にかけています。
深い自戒をこめて、今回の記事を書きました。
本日は以上です。
それでは、また。
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