療育の現場ではよく「問題行動」という言葉が使われます。
気に入らないことがあるとお友達をたたいてしまう、教師に反抗的な態度をとる、奇声をあげるなど、社会的に不適切な行動をまとめて「問題行動」と表現しています。
ですが、この言葉はよく注意して扱わなければなりません。
そもそも、その行動が「問題」となるのは、社会的な関係が前提となっているわけです。
無人島で周りに誰もいない環境で奇声をあげたところで、誰も困らないし、何の問題にもなりませんよね。
純粋な問題行動というものが存在するわけではなく、周囲との関係性を考えることで初めてその行動が問題となり得るのだ、ということです。
ではそのように社会的な関係の中でなんらかの問題行動が起こったとしましょう。
授業中に一人の生徒が突然奇声をあげ始めたら、静かに授業を受けている残りの生徒たちはやはり困りますから、なんとか状況を改善する必要があります。
ここで大切なのは、この生徒が起こしている問題行動は、本人だけに原因があるわけではないということです。
ほとんどの場合は、何かが刺激となって生徒が感じるストレスが増し、とうとう耐えられなくなって、奇声をあげて心の安定をはかろうとしていると考えられます。
「問題」という言葉からは、除去すべきもの・排除すべきものといったイメージが持たれがちですが、それだけで考えると支援はうまくいきません。
周囲の環境(物理的なものだけではなく、教師や友達といった人的なものも含みます)と本人との関係のどこかが・何かがうまくいっていない、というサインだと捉えましょう。
私が「問題行動」と表現する時は、以上のような意味合いをふまえて表現しています。
より正確に概念を伝える言葉があれば良いのですが、今のところこの言葉が一番よく浸透しているので、わかりやすさを優先して使っています。
こう言えばいいんじゃない?というご提案があれば、ぜひお知らせくださいませ!