887-1 マッチング課題とは
前回はこんな記事を書きました。
「同じ」「違う」という言葉と概念を学ぶためによく行われるのが、マッチング課題です。
マッチング課題とは、絵カードや具体物などを使って同じ(または違う)ものを選んでもらう課題のことです。
- 課題の意図が伝わりやすいこと
- 合否が明確なこと
- 難易度や概念化の度合いの調整が容易なこと
- 大人の指示に従うやりとりの練習にもなること
などの理由から、療育初期の練習に活用されることの多い課題です。
身近な物事の中にルールや法則があることを学んでいくための第一歩になります。
887-2 マッチング教材の作り方
今回は、ごく簡単なマッチング教材の制作方法と、それを用いた「同じ」と「違う」の練習方法をご紹介します。
教材作りはとても簡単です!
紙皿に、お好みのイラストやシールなどを貼るだけ。
「全く同じ絵柄」のものを2枚ずつ、最低2種類(計4枚)用意しましょう。
「似たような」ではなく、「全く同じ」でないと意味がありません。
たとえばリンゴの画像を検索すると、似たような画像が無数に出てきますが、それがすべてリンゴだとわかるのは、わたしたちがリンゴという概念を理解しているからです。
ものの概念化が苦手なお子さんにとっては、「似たような絵柄」は「別の絵柄」として目に映ることを理解しておきましょう。
紙皿を使う理由
今回は、絵柄を表現する土台として紙皿をご提案しています。
紙皿を選ぶ理由は以下の通り。
- 100円ショップ等で安価に入手できる
- 切ったり曲げたりの加工が容易
- 重ねて収納しやすい
- 大きく、縁が持ち上がっているので、操作しやすい
特に「操作しやすい」点はとても大切です。
トランプのようなカード型の教材だと、指先の繊細な作業が苦手なお子さんには、薄くて操作しづらいことがあります。
その点、紙皿は、不器用さんでも扱いやすいのがポイント!
自分の手で簡単に操作できる教材は、お子さんの学習意欲を引き出します。
高齢世代の方の脳トレなどにもお勧めですよ。
887-3 課題の進め方
課題は、まずは「同じ」のマッチングから始めるとわかりやすいでしょう。
マッチング課題の具体的な進め方
1.子供の前にAとBの紙皿を置きます。
2.大人がAまたはBの紙皿を見せ、「これと同じものはどれ?」と声かけして、子供に選択してもらいます。
3-1.正しく選択できたら、「そうだね、AとAは “同じ” だね」と声かけします。
3-2.間違って選択したら、大人が正しい紙皿を取って「”同じ” はこれだよ」と声かけします。
これを繰り返し、AとAは「同じ」だね、AとBは「違う」ね、と声かけをすることで、「同じ」「違う」という言葉と事象が結びついていきます。
間違ったときに「違うよ」「それは間違いです」などと声をかける必要はありません。
発達段階の幼いお子さんの場合、余計な音声情報は混乱につながる可能性があります。
正しい紙皿を示して「これとこれは “同じ” 」と表現するだけで十分です。
可能なら「同じ」とお子さんに復唱してもらいましょう。
そののち、1に戻って同じ課題を繰り返しましょう。
何度も同じ間違いを繰り返す場合は
「同じ」「違う」という言葉の意味がわかっていない、課題の意味がわかっていない、ものを見ることができていない(ものに視点を合わせられない、視点を合わせ続けることができない等)、平面のイラストを見分けることができていない、課題に興味がない、大人の指示を理解できない、などなど、さまざまな理由が考えられます。
ある程度まで対象に目線を合わせることができ、大人の話を聞くことができるお子さんの場合は、紙皿ではなく、手で触れて形がわかるものでマッチング課題を行ってみるのも一つの手です。
マッチングさせる素材は、「ゴルフボールと消しゴム」「大型ブロックとスポンジ」など、明らかに形や手触りが異なるもので、かつ、お子さんが手の中に握り込めるくらいの大きさのもので課題を行うとわかりやすいでしょう。
生活全体に幼さが目立つお子さんの場合、マッチング課題では難しすぎる可能性もあります。
型はめ課題や棒にリングを通す課題など、形状を合わせて手を離す(ものを落とす)ことで達成できる課題からスタートすると良いかもしれません。
発達段階が初期のお子さんほど、お子さんの状態に合わせて課題を繊細に設定する必要があります。
その課題が「できない」のではなく、課題がお子さんに「合っていない」可能性が高いので、お子さんに合った課題を探り出すために、療育センター等で専門家に相談されるのも良いかと思います。
上手にできる場合は難易度を上げる
難易度を上げるにはいくつかの方法が考えられます。
- たくさんの絵柄を用意して神経衰弱のようにして遊ぶ
- 細かい違いの絵柄を用意して注意深く見分ける練習にする
- イラストの代わりに文字・数字・記号(〇・△・□など)などを貼る
- 紙皿を室内のあちこちに隠しておき、探して遊ぶ
概念化の形成に向けて
全く同じ絵柄で「同じ」「違う」を判断できるようになったら、「ちょっと違うけど、同じ」ものも取り混ぜてマッチング課題を進めてみましょう。
同じものを描いた雰囲気の違うイラスト、イラストと写真、イラストと具体物、などなど。
イラストのリンゴも写真のリンゴも、どちらも同じリンゴと呼ばれるものなんだ、とわかることが、概念の理解の第一歩です。
本日は以上です。
次回の配信は5/29(月)です。
それでは、また。
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