苦手なおかずをひっくり返すお子さん
こんなご相談をいただきました。
食事で苦手なおかずが出ると、「食べない」と言ってお皿をひっくり返す。
本人に聞くと、やってはいけないとわかってはいる。
母親もそのつど注意はしているが、なかなか直らない。
最近は泣いてかんしゃくを起こすことが減ってきていたのに、またこんなことが起きて本当にがっかりです・・・。
こちらのお子さんは、嫌なことがあると泣いたり大声をあげたりして激しいかんしゃくを起こすことがありましたが、保護者の丁寧な働きかけのおかげで、最近はとても落ち着いて過ごせていました。
その状況下で、親御さんが「せっかく最近は落ち着いてきていたのに」とがっかりされるお気持ち、とてもよくわかります。。
人の育ちは、直線的に右肩上がりに進んでいくものではなく、進んだり後戻りしたり停滞したりしながら、有機的に発展していくものです。
なかなか難しいとは思いますが、三歩進んで二歩下がるのが子育てというものだ、というくらいの気持ちで、なんとかやり過ごしていただけたらなと思います。
働きかけのポイント3点
さて、今回の事例では、このような3点から働きかけていくと良いと考えます。
- 爆発する前に気持ちを逃がす
- 適切な対応方法を教える
- お皿をひっくり返しても無視する
爆発する前に気持ちを逃がす
発達障害を持つお子さんは、周囲にあふれている情報を適切に受け止めることが難しいことがよくあります。
目に見えるもの、耳に入るものすべてが頭の中でごちゃまぜになっていたり、その中でもなんとか考えをまとめて、集団生活の指示に従わなくてはいけなかったりして、大人が考える以上に苦労して生活しているのです。
ですから、「普通に生活する」ことだけでも、お子さんにとっては大きなストレスになっているということをまず理解してあげましょう。
今回のお子さんの場合、このようにして生活の中で少しずつたまっていたストレスが、苦手なおかずをきっかけに爆発しているのかもしれません。
日々の活動の合間にリフレッシュタイムを設けて、たまっているストレスを逃がしてあげることを試してみてはいかがでしょうか。
一人で静かに過ごす、好きなおもちゃで遊ぶ、ストレッチするなど、お子さんに合うリフレッシュ方法を探してあげてください。
適切な対応方法を教える
大人が食事をする時には、嫌いなおかずが出たからと言って、毎回ひっくり返しはしませんよね。
「これ苦手なんだよね~」と口で言うとか、そのおかずだけ食べないとか、お皿をそっと脇によけるとか、いろいろな方法で意思表示をしています。
これと同じようなことをお子さんにもできるようになってもらえると良いですね。
- お話ができるお子さんならば、「食べたくない」と言ってもらう
- 言葉が難しいお子さんならば、「×」を描いた絵カードを提示してもらう
- 文字が読めるお子さんならば、「たべたくありません」と書いたカードを提示してもらう
など。
お子さんにとって無理がない表現方法を考えてみてください。
そして、これを、食事とは別の場面で教えます。
お子さんが落ち着いた気持ちでいる時が理想です。
おままごとをしながらカードを出す練習をしたり、「苦手な○○が出て我慢してたのかな」などと気持ちを代弁してあげたり、大人が二人でカードのやりとりをしている様子を見せてあげたりなど、お子さんにとってわかりやすい方法で教えてあげましょう。
お皿をひっくり返しても無視する
「無視する」はちょっと冷たく聞こえる言葉ですが、お子さん自身を冷たく無視するのではなく、ひっくり返した行為だけを無視するという方法です。
ひっくり返した時は、お皿を黙って片付け、お子さんを叱ったり声をかけたりするのは止めてみてください。
片付け終わったら何事もなかったかのように保護者の食事を再開します。
できれば、ひっくり返しても代わりは与えずに食事抜きとすると、なお効果的です。
少しでもお腹に入れてもらおうという親心で、お子さんが食べやすいものを出してあげたりすると、お子さんは「苦手なおかずはひっくり返せば好きなものが出てくる」と誤学習してしまう可能性があります。
体調を見て無理はしないようにしてください。
また、水分は好きなだけ摂れるようにしてください。
並行して、「お水おいしいね」「上手にゴックンできたね」などと、何かをきちんと口に入れられた時はたくさん褒めてあげましょう。
苦手なおかずでも好き嫌いなく食べられるようになるのが理想ではありますが、このお子さんのように食事の場面で不適切な行動が出ている時は、食べる内容についての指導は一旦ストップしてあげましょう。
何でも食べるように指導するのは強いストレスを与えることになり、お皿をひっくり返す行為が強まる可能性もあります。
また、触覚や味覚が敏感すぎる場合(感覚過敏)、特定の食品に対して、単なる好き嫌いを超えた強烈な不快感を味わっていることもあります。
お皿をひっくり返す行為を修正していくためには、特に苦手な食材は出さずに練習した方が良いでしょう。
衝動をコントロールしやすくなります。
生活全体を俯瞰して働きかけを
特に食事場面で爆発することが多いのか、爆発した日には特別な活動や出来事がなかったか、など、お子さんの生活全体を俯瞰的に見ることで、働きかけのヒントが見つかるものと思います。
今回ご紹介したような働きかけは、食事の場面だけでなく、生活のさまざまな場面に応用できます。
これらの働きかけを繰り返すことで、生活全体も落ち着いてくると期待できます。
より個別具体的なヒントが必要な方は、オンラインセッションまでご相談ください。