字が汚いことが低評価の材料になりやすい
発達障害のお子さんは、発達上のさまざまな理由で、文字を書くのが苦手な場合が多いですね。
日本では美しい字が美しい心構えを表すと受け取られる文化もあり、字が汚い・雑であるということがとても低く評価されます。
もちろんきれいな字を書けるに越したことはないのですが、字が汚いからといってその子の努力が足りない、心がけが悪いと考えるのはあまりにも一方的です。
いつどんな時でも、お子さんの気持ちに寄り添い、認知特性をふまえた指導を心がけたいものです。
書き順を間違って覚えると修正しにくい
学校の先生の中には、書き順や見た目の美しさを厳しく指導される方がいらっしゃいます。
これはこれで、とても大切で、必要なことだと思います。
というのは、一度間違って覚えてしまった字を正しく覚え直すのはとても難しいからです。
最初からきちんとした字を身につけさせようとする方針は間違っていないと考えます。
ある程度の書字スキルは必要
学校の成績は、筆記テストや提出課題など、書かれた文字で判断されることがほとんどです。
日常生活の中でも、ものをまったく書かずに過ごすことは難しいでしょう。
したがって、字を書くことに強い苦手意識を持っているお子さんの場合でも、ある程度の書字スキルを身につけることは必要です。
文字を学ぶ2つの観点
字を指導する時には2つの観点があります。
1.トメ・ハネ・ハライや書き順など、字そのものを美しく書けるように練習する
2.気持ちや事物を表現するためのコミュニケーションツールとして活用できるように練習する
デジタルツールが飛躍的に普及している現代の事情を考えると、1よりも2を重視して指導したほうが、お子さんの人生にとって有意義であると考えています。
1をないがしろにして良いわけではありませんが、1にこだわるあまり、字を書くことに抵抗を感じたり、書くことが嫌いになってしまっては本末転倒です。
そのくらいなら1に対する要求水準を下げてあげるべきでしょう。
具体的な指導の工夫の一例
1、2のどちらも、お子さんの様子に合わせて、指導方法はいくらでも工夫できます。
その子が困っていること、その子の認知特性によって、どれがフィットするかはまったく変わってきますが、具体的に指導の工夫の一例を書いてみましょう。
1.字そのものを美しく書く練習
- なぞり書きを何度も繰り返す
- なぞり書き→模写→何も見ないで書く、という順番で練習する
- なぞり書きをした直後に書いてみる
- 大きなマスに書く
- マスの周りを色でなぞる
- 書くところ以外の情報が目に入らないように隠す
- ひも粘土で字の形を作る
- 漢字パズルを使う(参照記事)
- 文字練習アプリを活用(間違えた直後にアラートが出たり、間違えるとそれ以上先に進めなかったりするので、文字の正しさを追求しやすい&自分の指を動かして書くと字を覚えやすくなった事例あり)
- トランポリンなどで体幹を鍛える(姿勢を維持する力や手先をコントロールする力が弱い場合)
- 指先を使う運動をする(同上)
2.コミュニケーションツールとしての練習
- 「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「どうした」のカードを作り、一つずつ考えて書き出していく
- 絵を見てその内容を説明する
- 2~4コマのマンガを切り分けて正しい順番に並べ替える
- 人の気持ちを考える練習をする
- 単語(名詞、形容詞、感情を表現する言葉、事物の様子を説明する言葉など)を覚える
- 指導者との話し合いを通じて考えを掘り起こし、付箋に代筆し、付箋を並べ替えることで文章としてまとめる練習をする
- 最初にPC入力をし、あとで清書する
- 文字は本人と指導者が読めれば良いことにして、雑な字でも、符丁を使っても良いことにする
パッと思いつくだけでもこんな例が出てきます。
もっといろいろなやり方で、お子さんに合わせた指導を工夫されている方も大勢おられることでしょう。
学習の目標は一つに絞る
何かを練習する時は、目標を一つ決めて練習開始時にお子さんと共有し、それ以外の点は大目に見ましょう。
たとえば、文字をマスにおさめることを練習するなら、字のきれいさや書き順は大目に見る。
字を正しく書くことを練習するなら、マスにおさめることを気にしなくて済むように大きなマスに書く、といったようにです。
これによって、指導の焦点がぶれず、お子さんが集中しやすくなりますし、お子さんと指導者の双方に達成感が生まれやすくなります。
学ぶ楽しさが人生に彩りを生む
何かを学ぶということは、机に向かって国語や算数を勉強することだけを言うのではありません。
その子が新しい知識を得て、新しい体験をして、
すごい!
わかった!
できた!
楽しい!
こんなふうに感じられることが、 すべて 「学び」 と言ってよいでしょう。
人に強いられてムリヤリ鉛筆をとる、厳しい指導にやる気や自信を失う、といった学び方では、「学んでいる」とは言えません。
学ぶ楽しさを知っているかどうかで、 お子さんの人生の彩りは大きく変わってきます。
ちょっとした療育の知恵を活用することで、すべてのお子さんが本来の学びの楽しさを感じられたらいいなと、心から願っています。
- 療育のセカンドオピニオンが欲しい方
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育児・療育は親子の育ち合いです。
お子さんのお話だけでなく、親御さんのお話を伺うことも大切な時間です。
うまく書けない・しゃべれないと思う方もご安心ください。
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