就労という関門
発達障害のある人やその保護者にとって、就労は人生の大きなターニングポイントとなっています。
誰にとっても就職先を選ぶのは容易ではないわけですが、発達障害のある人々は、定型発達の人々以上にさまざまなことを考える必要があります。
この記事では、発達障害のある子供たちの就労について、どのような観点から準備・支援をしたいかを考えてみました。
就労のために必要な準備や支援とは?
8つのポイントに分けてご紹介します。
ポイント1:身辺自立
身じまい、通勤、社内でのふるまい、予想外の出来事への対応など、社会人としてふさわしい行動ができるように練習しましょう。
小さい頃から積み上げてきた身辺自立のスキルが活きてきます。
単独で通勤できることを雇用条件とする企業も多くあります。
支援者が通勤に同行する方法もありますが、一人で行動できる範囲は広い方が良いでしょう。
ポイント2:通勤
駅で同じ階段しか通れない、同じ車両にしか乗れないといったこだわりがある場合、早めにこだわりを和らげておいた方が行動半径が広がります。
駅には毎日同じ人がいるわけではありません。
また、列車の遅延などの突発事態もよくあることです。
どうしても変化に耐えられない場合は、徒歩圏の職場を検討するのも手です。
ポイント3:認知特性に合った仕事を
自分の得意なことが活かせる仕事内容を探しましょう。
決まったことを決まった通りにこなすのが得意だが予定外のことが起きると混乱する、話すのは得意だが文字を読むのは苦手、など、自分の得意・不得意をよく知った上で仕事を検討すると良いでしょう。
ポイント4:認知特性に合った特技を
自分の興味に応じたスキルを早いうちから特訓するのもお勧めです。
画像・音声・映像編集、WEBサイト作成、翻訳など、需要の高いスキルを身につけると就業の選択肢が広がります。
最近では、WEB上で仕事を請け負うことができるサービスも多数あります。
技術があれば自宅で単発の業務を請け負うといった働き方も可能になりますので、対人コミュニケーションが苦手な人にはお勧めです。
ポイント5:選択の練習
どんな仕事をしたいか、どこに就職するか、最終的に決めるのは自分自身です。
就労の他にも、恋愛や結婚、育児など、人生のターニングポイントは数多く存在します。
自分の人生を自分で選択できるように、小さい頃から自分のことを自分で決める練習をしていきましょう。
たとえば、朝どんな洋服を着るか、今日はどんなことを学習するか、いつ休憩を取るか、学習後のお楽しみを何にするか、など、さまざまなタイミングで可能な限り本人の意見を取り入れていきましょう。
自分が決めたことであれば、主体的に参加しようという気持ちになりやすく、学習への集中力が高まることも期待できます。
ポイント6:一緒に働く仲間への支援
たとえば人づきあいがうまくない当事者に対して、「あの人は特別だから周囲が支えなければ」などと我慢するのは、支えることとは違います。
我慢が重なると、当事者への悪感情にもつながりかねません。
また、当事者としても、周囲の人々とのやりとりの中で気持ちの良い人づきあいの仕方を学ぶことは大切です。
周囲の「我慢」は、当事者がコミュニケーションスキルを学ぶチャンスを減らしているとも言えます。
当事者も、周囲の人々も、一緒に向上していける関係を築くために、お互いの関係の持ち方をサポートする支援者がいると理想的です。
ポイント7:就労後にも確認を
- 仕事内容が事前の約束と違った
- 同じ部屋で働く社員の香水のにおいが苦痛
- 部屋のレイアウトが集中できない
など、実際に働いてみて初めてわかることはたくさんあります。
当事者が自分で訴えることが難しい場合は、支援者が介入して、より良い環境作りを模索しましょう。
ポイント8:企業の姿勢
世の中には数多くの企業がありますから、中には、さまざまな支援が必要な当事者の存在をマイナスと受け取る場もあります。
発達障害の当事者の就労をきっかけに、この考え方自体を変えていければと願っています。
いざ一緒に働いてみれば、「発達障害の当事者」という一括りの存在ではなく、
事務作業が得意で、空気を読むことは苦手だけれど、話せばちゃんとわかってくれる、おしゃべりが大好きなAさん
物静かで、画像ソフトの扱いが得意で、注意されると落ち込んでしまうけれど、時間内にきっちり作業するBさん
などなど、一人ひとりの姿がはっきり見えてくるはずです。
当事者それぞれの認知特性に応じた個別のサポートをどう工夫すれば良いのか、等、難しく感じられる時はあるかもしれませんが、ぜひ専門家等に相談しながら、どうすれば社内の全員が心地よく仕事をしていけるか、模索していただけたらと思います。
すべての人の働きやすさにつながる
以上、身辺自立から企業の姿勢まで、8つの観点から、就労のために必要な準備や支援のヒントをご紹介ました。
この8つの観点は、何も発達障害の人だけに当てはまるものではありません。
どんな人にも当てはまります(たとえばポイント7で、同僚に気になることがあっても遠慮して言えずにいる、なんて方も珍しくないのではないでしょうか。)。
特性の強い人は、そうでない人と比べて、ちょっと支援の必要な場面が多いだけです。
特性の強い人々の働きやすい環境を整えることは、特性の薄い人々の働きやすさにもつながります。
いつか、障害の有無に関係なく、ただそれぞれの人の得意なところを活かし合う世界になればと思います。
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