メール講座受講生のKさんから、こんなご質問をいただきました。一部抜粋してご紹介します。
本人は「算数は得意」「国語は苦手」と言っています。
見ていて思うのは、計算はまあまあ人並みにできています。 でも書字は苦手さがある(不器用な)気がします。 |
Kさんのお子さんは、7歳の男の子です。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の傾向をお持ちだそうです。
書字に苦手さ・不器用さがある気がする、ということでしたので、指・手・腕を使う練習を色々とご提案したところ、こんなお返事が。
アドバイス頂いた、全体的な体の力(腕力等)のトレーニングになりそうなこと、また指先の訓練(ブロックなど)… どれも本人大好きで、割と行っています。
集中していると?出来ているんですよね…なのに、書字は苦手。まるで『やる』ことを意識しなければいけない作業、が苦手。。。のように感じます。なので、もしかしたら緊張せず、やり慣れたら割合出来るようになるのか… なんて気づきがありました。
(中略)
苦手な理由の一つに『褒められないから嫌い』もあると思います。家庭では褒めると…とても良い字を書くこともあるのです。 |
そこで、お子さんのノートの写真を送っていただきました。
それが、こちらです。
とても立派に書けていますね!
文字の形もしっかり捉えていますし、マスの中に丁寧に収めており、補助線とのバランスや配置も正確です。
消しゴムで何度も直した様子もありません。
一回でこれだけ書けているのであれば、手や腕の動かし方、目の使い方などには、大きな問題はないように思います。
Kさんのおしゃるように、
「やる」ことを意識しなければいけない作業が苦手(書くぞ!という緊張感に弱い)、
褒められないからつまらない、
といった気持ちの部分が大きいかもしれません。
また、やりたくないのにやらされている、といった感覚も、書字に向かう意識を邪魔しているのかもしれません。
そこでKさんには、「具体的に褒める」働きかけをご提案してみました。
学校から帰ってきたら、お子さんと一緒にノートを確認して、その日書いた字の中で一番上手な字を選びます。
見た目がきれいなだけでなく、お子さんが「一番頑張って書いた」と感じる字でも良いでしょう。
その字を拡大コピーして、壁に貼ったりファイルに入れたりして表彰する、という働きかけです。
「今日一番の字」をたくさん溜めて、時々それを振り返ってみると、字を書くことに自分でもやる気が持てるようになるかもしれません。
Kさんの場合、学校の先生もお子さんのことをよく理解してくださっていて、「よく書けた字を褒めてあげてください」と面談で話されていたそうです(^ ^)
身近に信頼できるサポーターがいるのは、とても心強いですね。素敵な環境だなと思います!
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Kさんからはこんなご質問も。
国語も算数も文章理解が難しいようです。
一度読んだだけでは、字面を見るだけなのか「で?」と本人。 私がもう一度音読すると、それなりに理解できるように感じます。 |
文字・文章を読み慣れていないお子さんにとって、「黙読」「音読」「内容理解」は、すべて異なる力です。
多くの大人は、文字を黙って素早く読み下すだけで、それを音声で再現することもでき、同時に意味を解釈することもできてしまうので、この3つを同時に行うことに難しさを感じる人の感覚は掴みづらいところがあるのですよね。
「読むこと」と「理解すること」は全く別の力だ、ということを理解しておいていただくと、子供たちの様子を把握しやすくなるかと思います。
また、「音読すれば意味が掴める」ということを頑なに信じている国語教師の方もいらっしゃるのですが、これもある意味で間違いです。
音読することで、黙読では掴みきれなかった意味が急に見えてくることは確かにあります(私もこのタイプです)。でも、全員がそうではありません。
音読すると、読むことだけで精一杯になってしまって、内容理解まで力が及ばないお子さんもいらっしゃいますし、自分で読み上げても意味がわからないが、他人に読み上げてもらって音を聞いていると意味がわかる、というお子さんもいらっしゃいます。
このように、文章読解には色々な理解のパターンがあることを把握しておいていただければと思います。
さて、Kさんのお子さんは、大人に音読してもらうとわかりやすいということでした。
耳から聞き取ることで理解がスムーズになる場合は、「読み上げ機」をお勧めしています。
有名なのはデイジーですね。(公式サイトにリンクを貼ってあるので見てみてください。)
スマートフォンやタブレットのアプリでも様々な読み上げ機が公開されていますので、いくつか試されてみると良いかと思います。
学校の授業にも取り組みやすくなりますし、ご家庭で宿題をする時にも効果的です。
「人に読んでもらうのを待つ」のではなく、「自分で機械を操作しながら好きなタイミングで音声を聞く」ことができるので、より主体的に、やる気を持って学習に取り組めるようになることがしばしばあります。
また、音声を聞いて一通り理解はできても、内容を正確にイメージするところまではもう一歩深めきれていないのかな?という印象も受けます。
字面は読めるが、意味がすぐ頭に浮かばない、という場合は、
◆イラストを見ながら単語や短文を読む
◆短文を読んでその情景を言葉で説明する
◆説明された情景にあてはまるイラストを選択する
◆短文を読んで内容に関する質問に口頭で答える
といった練習方法が考えられます。
いずれも、ご本人が「内容をイメージしよう」という意識で読むことが大切です。ご本人のレベルに合った内容・質問方法で課題を設定しましょう。
今回は説明を省きますが、必要な方は別途お問い合わせください。
今回は以上です。
支援のご参考になればと思います。
Kさん、情報共有をご快諾いただき、ありがとうございました!
それでは、また!