メール講座を受講されているFさんから、転園についてご相談がありました。

ご本人にご快諾いただき、一部抜粋してご紹介します。

 

============

現在は週に2日療育教室、週に3日幼稚園の午前保育に通っております。

来年から年中さんになるのですが、このまま療育と幼稚園を半々で通わせるか、しっかりと療育の幼稚園的なものに通ったほうがいいのか迷っております。

 

幼稚園では、一斉指示は通らないし、嫌なものは嫌といって床に寝転んだりしているようです。

多動もなく、1対1の指示は通るし素直で扱いやすいと思ってるくらいです。

言語とコミュニケーションの力は圧倒的に遅れているという実感はあります。

 

幼稚園のメリットとしては、同世代の子供集団の経験です。

一方、幼稚園スタイルの療育では、症状の重めのお子様が中心で子供同士の関わりが難しいかなという印象です。

 

幼稚園での普通レベルに息子をカツカツ合わせるという環境より、環境が整った場所で息子に合ったプログラムで小さな達成感や成功体験を積んでいくほうがいいかと思うのですが、子供同士の関わりあいを考えると、このまま半々でいったほうがいいのか迷っています。

============

 

Fさんは発達障害についてじっくり勉強されていて、「定型発達の子に近づけたいというより、本人が苦手で困っていることに手をかけてサポートして、最終的に自分で解決できるようになってほしい」とお考えです。

そこで、幼稚園の先生方と何度も話し合い、適切な対応方法を伝えていかれました。切り替え用のキッチンタイマー、支援の役に立つ書類、保護者を飛び越えて療育施設とやりとりした場合の記録用紙なども作って渡しておられるそうです。すごいバイタリティーに脱帽です!

先生方も大変手厚くサポートをしてくださり、Fさんのお子さんは、幼稚園では大きなトラブルもなく楽しく生活できているとのことでした。

 

ところが、、、

Fさんのお子さん以外の発達障害の子供たちに対しては、「幼稚園はほとんど対応できていない」とのこと。

障害に対する知識やノウハウがなく、障害特性から来ている不適応反応に対して、叱りつけたり、放置したり、といった、あまりふさわしくない対応が目立つそうです。

 

******

 

お子さんの生活に大きく影響する「転園・転校」は、判断が大変難しいですね。

今回の例では、Fさんのお子さんは楽しく生活できているのですが、それは「保護者が主体となって支援方法を提案し」、「それを先生方が丁寧に実践する」という2段階の理由があるようです。

Fさんが率先して活動されることで、先生方が「発達障害について勉強しよう」という気持ちになってくだされば、Fさんのお子さんだけでなく園の他の子供たちにも良い影響がありそうですね。

ところが、先生方が発達障害への意識を高めるご様子は残念ながらまだ見られず、Fさんは、「自分から何でも先生に提案しなければならないので、疲れてしまった」とおっしゃっていました。

 

 

そこで、転園の判断材料として、以下のようにご提案しました。

 

 

●年中・年長と進級していく中で、園の対応がそのつど変わってしまう可能性があるか?
(前年度の支援内容の引き継ぎ方法は?)
⇒ちゃんと引継ぎます、と口で言うだけなら誰でもできるので、先生の言葉だけを聞いて安心なさらず、実際にどのような引継ぎを考えているか確認されることをお勧めします。
日常生活の中でも、たとえば朝保育の時間と日中保育の時間での申し送りの様子などをよく観察されると良いでしょう。

 

●他の気になる子への支援はどう行っているのか?
⇒ご自身のお子さんへの支援とは関係ないように思えるかもしれないのですが、結局、子供たちの困り感を見逃している(障害のせいで困っていると気づけていない)ということは、障害特性を感じ取る目に欠けているということです。
一番困っている子でもうまく過ごせる環境を整えていければ、ご自身のお子さんにも、他の定型発達のお子さんにも間違いなく良い影響があります。
園全体が、どんな子でも過ごしやすい環境を整えようと考える雰囲気に変わっていけば、これからの数年間を安心してお任せできると思います。

 

●家庭で作成した支援(絵カードなど)も受け入れてもらえるか?
⇒先生方が工夫して支援してくだされば一番ですが、いちいち先生に説明するのが疲れるということであれば、こちらで支援を用意して提供するのも一つの方法かと思います。
構造化の写真カードを保護者が撮影して作成するならば撮影のために立ち入ることを許可してもらうとか、空き教室を支援教材作成のために借りるとか、どこまでするかは保護者次第ですが、園と交渉してみる価値はあるかと思います。

 

 

******

 

 

何度かやりとりをする中で、Fさんは「転園」に向けて決心を固められました。

その時のメールを一部ご紹介します。

 

============
私さえぐいぐいいけば、幼稚園は対応してくださいます。

が、私が主体となって、子供の困り感を見つけ、その対応・検証を繰り返しやっていく気力や知識がありません。

専門家に安心して任せたいなと思うのです。

 

他の保護者も不満を抱えてはいますが、提案や交渉はせず、受け入れています。

「できないから叱られて当然」という考えのようです。

「定型発達の集団にもまれて過ごすと伸びる」ということを盲目的に信じているように思えます。

実際は、もっと適切な介入が必要ではないかと思うくらい、幼稚園に適応できていないです。

 

療育で知り合う保護者は、自身で勉強するより療育機関へ任せる方が多く、熱心に取り組まれてる方は、いかに普通に近づけるかをゴールにしているように思えます。

(タキモト註:Fさんは「普通に近づける」というより、ご本人が苦手としているところを支えて伸ばしてあげたいとお考えです。)

 

相談と言いながら結論は出ているようです。

考えを文面にし整理して初めて気が付きました。

頂いたアドバイスや判断材料も参考になり、転園の考えが固まりました。

 

誰にも話を分かってもらえない、同じ視点でお話ができない、無知なゆえに判断基準もままならない。

なかなかの八方塞がり感で、はげそうでした。

本当は、ただ考えを聞いてもらいたいとか、判断や考えに対する自信がなかっただけだとか、ひらたく言えば「かまってちゃん」だったのかもしれません。お恥ずかしい。

 

 

療育を勉強して一番感じたことは、どんなお子さんにも等しく有効で、理想的な関わり方だな、ということです。

そして、その専門家に相談できる窓口があるというのは、本当に心強いです。

専門家の見解や、判断に対するアドバイスなど、大変丁寧で誠実な回答を頂き本当にありがとうございました。

============

 

 

Fさんにとっては、無意識に答えが決まっていたのでしょうね。

お考えをまとめるお手伝いができて嬉しく思います。

Fさんのお子さんが転園先でさらにたくさんの成功体験を味わわれることを心からお祈りします!

そして、Fさんが退園されたことをきっかけに、先生方が発達障害についてもう少し理解を深めていただくことにつながればと願わずにいられません。

 

Fさんのように、「保護者が声を上げる」ことは本当に大切なことです。

三輪堂は「家庭が一番の療育場所」と考えていますが、これは、お子さんのことを本気で心から愛し、心配し、広く深く見守れるのは、保護者しかいないからです。

 

理想的には、保育士や教師はもちろん一般の保護者も、子供と接する立場の大人は全員が、発達障害についての知識と適切な関わり方を知っておくべきではないかと思っています。

が、それまでは、「自分の子を守れるのは親だけ!」という気持ちで、どんどん保護者が先生方に交渉・提案していく勇気を持っていただきたいなと思うのです。

子供を持つ親は、時には自分に鞭打って、ずいぶん無理をしてでも、子供や家庭や社会と向き合わなければいけない場面がありますよね。

私は、無理をして頑張っている保護者の支えになりたいと思います。無理をしきれなくなったり、どうしても自分だけでは答えが出せないと思う時は、どうぞ私のところに来てください。お子さんのために一番良い方法は何か、ご一緒に考えていきましょう。

 

 

それでは、また!