小学校6年生のお子さんをお持ちの保護者から読書感想文についてご質問をいただきました。

 

 

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「読書感想文では 『そもそも感想って何?』 というところからわかっていない。

読んでも 『楽しかった』 くらいしか意見がなく、
何が楽しかったかを聞いても 『わからない』 と言う。

一冊の本の部分部分で面白いところはあっても、
全体を通すとよくわからない。

過去の回想や未来の話など、時間の動きが複雑な本は理解が難しく、
主人公が誰なのかもよくわからなくなってしまうようだ。」

 

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読書感想文を苦手とするお子さんはとても多いですよね。
(大人でも、「感想」を意識して本を読んでいる人は少ないのでは、と思います。)

 

読書感想文で何を書いたら良いかは全く自由ではあるのですが、ある程度の「書き方」を提示してあげたほうが、このお子さんにはわかりやすいでしょう。
また、このお子さんの場合は、小学校高学年向けの本は少し複雑なのかもしれません。まずは簡単な本を噛み砕いて読む経験を繰り返して、表現方法や語彙、日本語の構造に慣れていくと良いでしょう。

小学校6年生だからといって、6年生相当の本を読まなければいけないということはありません。九九がわからないお子さんに「396 × 165 = ?」と尋ねるようなもので、わからなくて当然です。

 

 

たいていのお子さんは、何も感じていないのではなく、感じたことを表現する言葉が足りないだけということがほとんどです。本を読む楽しさを感じながら、少しずつ言葉を引き出してあげましょう。

この作業では、指導者の導きがとても重要です。 指導者も一緒に本の魅力を再発見するつもりで、じっくり時間をかけて取り組んでいきましょう。

 

 

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まず、思い切った低学年向けの本か絵本を用意します。

私がよくご提案するのは絵本の「ぐりとぐら」です。
文字だけの本よりも、挿絵のついた絵本のほうが、イメージを共有しやすく、言葉も出てきやすいですし、指導者もヒントを与えやすくなります。
お子さんが(6年生にもなってこんな絵本?)と反感を持つ場合は、お母さんはこの本が大好きだからあなたにも一緒に楽しんでほしい、などと理由をしっかり説明してあげてください。

この本を使って、何日かにわたって、作業していきます。

 

 

 

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【要約文を書こう】
まず目指すのは、感想文を書くことではなく、要約文を書くことです。
本来は別の課題ですが、表現するための言葉が少ないお子さんには、言葉を蓄積する良い経験になります。
また、読書感想文の土台として作文にも活かせます。
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1.付箋にまとめる
まず、いつ・誰が・どこで・何を・どうした、に注意しながら、1ページずつ場面を言葉で説明していきます。
最初は単語しか出なくても構いません。
説明したことを付箋にまとめます。 付箋には、1枚につき1つの事柄のみを書くようにします。
いつ・誰が・どこで・何を・どうした、の順番で台紙に貼っていきます。

 

たとえばぐりとぐらの1ページ目で言うと・・・

 

いつ   → 書かれていないのでわかりません
誰が   → 「ぐりとぐらが」
どこで  → 「森の奥へ」
どうした → 「出かけた」

 

この他、「大きなかごを持っている」「赤い服を着ている」など、気づいたことは何でも追加しましょう。
言葉が出にくい時は、たとえば「誰が?」と質問しながらぐりとぐらの絵を指さすなど、わかりやすいヒントを与えてあげましょう。

何か少しでもお子さんが言葉を表現できたら、「うんうん、そうだね!」などと前向きに受け止めてあげてくださいね。

 

 

2.付箋の内容をつなげる
これを全ページで行ったら、また1ページ目に戻り、今度は1ページずつ、場面の要約文を作ります。

基本的には、いつ・誰が・どこで・何を・どうした、を文章につなげればOKです。

 

たとえばぐりとぐらの1ページ目は、「ぐりとぐらが森の奥へ出かけた」となります。
つなげるだけですから、簡単ですね。
できた要約文は、一文ずつ短冊に書いておきましょう。
「ほら、要約できたよ!すごいじゃない!」とここでもしっかり褒めます。

 

 

3.全体の要約文を作る
各ページの要約文ができたら、それを並べて、最もインパクトのある文章をいくつか拾い出します

 

何文字でまとめたいかによって、いくつ文章を拾い出すかは変わってくるのですが、絵本ならば2~3文で良いでしょう。

何が強いインパクトで、何が弱いインパクトか、ということを言葉で説明するのは非常に難しいので、作業を通じて体感させていきます。

最終的に「ぐりとぐらが森で見つけた卵でカステラを作る話」というくらいの文にまとめさせます。

 

「○○君がまとめてくれました!すごいね!できたじゃない!」と、おおげさに褒めてあげてください。
初めは指導者がかなり言葉を足してあげなければここまでは進めないと思いますが、それで構いません。
お子さんの集中力に応じて、1日の作業数を加減してあげてください。

 

 

 

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【「どう思う?」】
次は、「どう思う?」とたくさん質問するステップに入ります。
最初はなかなか答えが出ないと思いますが、とにかく質問しまくってください!
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4.「どう思う?」から連想を広げる
ぐりとぐらの服装について、大きな卵について、卵の殻が固いことについて、森に咲いている花について、料理について、カステラについて、みんなでカステラを食べることについて・・・ などなど、ページごとに最低3つは、どう思う?と聞いてください。

初めはうまく答えられなくて構いません。お子さんが答えられない時は、お母さんはこう思うんだよ、などと指導者の意見を話してあげてください。
最初に要約の作業をしているので、いきなり絵本を見るよりは言葉が出やすいと期待できます。

 

そのうち、カステラがおいしそう、とか、カステラをみんなで分け合って偉い、とか、答えられる質問も1つ2つ出てくるはずです。

そうしたら、その答えを広げていきます。

 

カステラは甘いよね。
あなたは甘いものは何が好き?
最近食べた甘いものは何?
そのお菓子はどこで売っている?
どこで食べた?・・・

 

などなど、連想を思いつく限り広げます。質問と答えを簡潔に付箋に書いて、台紙に貼っていきましょう。

大体質問と答えが出尽くしたら、机の上の付箋を眺めて、「1冊の絵本からこんなに意見が出せたよ!すごいね!」とたくさん褒めてあげてください。

大半の意見が指導者から出ているものであっても気にせず、お子さんに達成感を持ってもらうことが大切です。

 

 

 

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【まとめの作業】
最後は、感想文を文章にしていく作業です。
このステップは、初めのうちはお子さんには難しいと思われます。
まずは指導者が主導してあげましょう。
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5.付箋を並べ替える
4で書いた付箋を、なんとなく文脈が通るように並べ替えながら、文章を作ってみてください

 

カステラがおいしそう→ ぼくは甘いものが好き→昨日、アイスを食べた→アイスはスーパーでお母さんが買ってきてくれた・・・

 

などなど、つなぎ方はひとまず指導者の考えで構いません。
できた文章は一文ずつ短冊に書いておきます。

 

 

6.要約文と組み合わせる
これを、最初の要約文と組み合わせてみましょう

 

「『ぐりとぐら』は、2匹の野ネズミが森で見つけた卵でカステラを作る話です。絵本の中のカステラはとてもおいしそうです。ぼくはカステラのように甘いものが大好きです。昨日も、お母さんがスーパーで買ってきてくれたアイスを食べました。・・・」

 

このように、作文ができていくわけです。

 

断片的な言葉を文章にしていく作業は、今の段階では難しいと思いますので、まずは指導者が付箋や短冊を並べ替えながら文章を作ってあげてください。

1~4の作業を繰り返しているうちにお子さんも文章に慣れていきますので、少しずつ自力で文章を作ることにもチャレンジしてもらいましょう。

 

 

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細かく説明すると非常に先の長い訓練のように見えるかもしれませんが、特に時間がかかるのは最初の2~3冊です。

お子さんが「これなら自分にもできる!」と感じられるようになると、作業に弾みがついてくるはずです。
(指導者が作業に慣れてくるというのもありますね。)

 

 

大切なのは、作業の節目ごとに褒めるということです。
お子さんの言葉や学習に向かう姿勢を前向きに評価して、お子さんが作業全体を楽しいものと感じられるように働きかけてあげてください。

 

冒頭にも書きましたが、読書感想文という課題は、文章を書くことの大変さや、よくわかりもしない「感想」を書かされるという負担感が高く、苦手とするお子さんが非常に多い課題です。

 

 

が、本来は、本を読む楽しさが第一にあるべきで、本を読んで味わった感動を分かち合うために感想文を書くという姿が理想です。
読書感想文を書かなくてはいけないという思いで読書が苦痛になるのではまったくもって本末転倒ですね。

 

 

今回お伝えした作業の目的は、何より、読書の楽しさを伝えてあげることが一番です。

「ぐりとぐら」という絵本を題材としている理由のひとつもそこにあります。この絵本は保護者もお子さんもほとんどの方が小さい頃に触れたことがあり、親しみを持たれています。

 

お菓子を作る楽しさ、
大きな卵を見つけた驚き、
なんともおいしそうなカステラの絵の明るさ、

甘いお菓子を食べる愉快な気持ち・・・

 

指導者自身も本から自分の意見を引き出しやすく、お子さんと共感するポイントを見つけやすいのです。
作業のスタートとして理想的な絵本だと思いますが、もちろん、ご家庭でお気に入りの本を題材としていただいても構いません。
あまり内容が複雑になると作業が難しくなりますので、ごくシンプルな筋書きのものを選んでくださいね。

 

 

 

これらの作業で、お子さんが読書の楽しみに気づいていただければ何より嬉しく思います。
指導のご参考になればと思います。

それでは、また!