何件か、話すことについてのご相談をいただきました。

「1歳2ヶ月の男の子。全く言葉が出ない」

「5歳の男の子。言葉は出るが会話のやりとりがうまくいかない」

そこで、言葉や会話について少しまとめてみます。

 

——————————–

 

■言葉が出ないことについて■

 

一般的な発達の順番では、1歳を過ぎた頃から、喃語や片言の言葉が出始めるとされています。周囲のお子さんが話し始めているのに、自分の子が一言も口にしない状況は、どれほど保護者の気持ちを焦らせ、苦しめることかと思います。

 

ご相談のご家庭でも、お母様がご自分を指差して「ママ」と発音してみせるなど、一生懸命に声かけをされているご様子です。

お子さんがうるさがるような素振りを見せないのであれば、声かけをする働きかけはこの調子で続けていただくと良いかと思います。
ただ、無理は禁物です。

 

お子さんがいつ言葉を話すようになるかは、誰にもわかりません。それを決めるのはお子さんの心と体だけです。

今の段階では、「言葉を話させよう」「どうすれば言葉を話すようになるか」と考えたり工夫したりするより、お子さんの育つ力を信頼して、温かい愛情で包んであげるのが一番だと思います。

 

「言葉を話させよう」と保護者が努めれば努めるほど、いつ結果が出るかわからない働きかけに保護者の心も辛くなりますし、そのピリピリした空気感はお子さんにも伝わります。そうすると、無意識にお子さんの心が固く閉じてしまう可能性もあります。(大人でも、ピリピリした相手には、何をどんなふうに話しかけようか、なんとなく様子を探り探りになりますよね? 少なくとも、のんきに明るく話しかけようという気持ちにはなりにくいはずです。これと同じことが無意識にお子さんの心にも起こります。)

人の気持ちは、言葉だけで伝え合うものではありません。きっとこの子のお母さんには、赤ちゃんの気持ちが直感的に伝わっていると思います。お母さんの「言葉を使わせよう」という意識が強すぎると、赤ちゃんの心の動きを感じ取りにくくなります。一旦、言葉から意識を離して、何も考えず、赤ちゃんに無心に寄り添ってみるのも良いと思いますよ。

「言葉を出させるために、話しかけなくちゃ」ではなくて、お母さんご自身の心からふわっと出てきた言葉を、自然に話しかけるのが一番です。
よその子とつい比較してしまって、お母さんご自身の言葉への意識が強くなってしまった時は、あえて何も話しかけず、ただ赤ちゃんを抱きしめてあげてください。赤ちゃんの温かさ、柔らかさが、お母さんの気持ちを楽にしてくれますよ。

 

無心に赤ちゃんに寄り添い、保護者が自然に赤ちゃんに話したいと思ったことを何気なく話しかける、という働きかけを続けるうちに、保護者の温かさ、柔らかさ、明るさが赤ちゃんの心を潤して、赤ちゃんの育つ力が花開きます。いつか、時が来れば、はじけるように言葉が出始めると思います。

それまで、何年かかるかわかりませんが、どうぞ赤ちゃんを信じて、赤ちゃんとご一緒に歩いていってみてくださいね。私も応援しています。

 

 

■会話ができないことについて■

 

相手と会話をするためには、色々なスキルが必要になります。

・相手の言葉を正確に聞き取る
・それを正確に理解する
・タイミングを逃さずにふさわしい返事を考える
・考えた返事を正確に発声する
・自分の発した言葉を自分で聞き取りながら内容を吟味する
・内容を吟味しながら必要に応じて修正する
・状況に応じて会話の流れを読み、話を続けるか切り替えるかを瞬時に判断する
・その間、常に相手に意識を集中し続ける
・かつ、会話に関係のない余計な情報をうまくスルーする

・・・など、など。このように複雑なプロセスを瞬間的に行っているのですから、人間ってすごいですよね!

 

お子さんがこれらのプロセスのどこに苦手さを感じているかを見つけるのが、会話の練習のカギになります。

たとえば、相手に注目する意識が弱い、ふさわしい言葉がうまく出てこない、という場合の練習方法を考えてみましょう。

会話の練習は、「楽しく練習すること」が一番です。たいていの人は、人の話を聞くより、自分の話したいことを話したいと思うものです(大人でもそうですよね)。お子さんの場合はなおさら、我慢してまで相手の話を聞こうという気にはなりにくいでしょう。そんな時でも、会話そのものが楽しいと感じれば、積極的にやりとりに参加したくなります。相手に注目する・集中を維持する力が弱いお子さんでも、楽しい場面では注意が続きやすくなります。

そこで、楽しく相手に注目しつつ、場面に応じた言葉をやりとりできる「変身ゲーム」をご紹介します。

 

<変身ゲーム>

 

1.大人の様子をよく見させる
「よーく見てね!」と明るく声かけします。
10からカウントダウンするなど、見るべき時間の幅を指定してあげると、集中しやすくなります。

 

2.大人が一旦退室する
部屋を出る、カーテンのかげに入るなど、お子さんの目に入らないところに移動します。

 

3.大人が着衣の一部を変更する
ネクタイ、スカーフ、ジャケット、めがね、帽子など、身につけているものを外したり、変更したり、追加したりします。
時々、パーティグッズの鼻めがねなど、面白いものを身につけるのも楽しいでしょう。
※楽しくなりすぎてテンションが上がりすぎると練習が成立しなくなることもありますので、様子を見ながら加減しましょう。

 

4.再度入室する
盛り上がらせたい場合は、ジャジャーン!などと効果音をつけて入っていくのも楽しいでしょう。

 

5.どこが変わったか、お子さんに発表させる
お子さんが複数参加されている場合は、順番に発表する練習にも発展できます。
たいていは口々に発表して収集がつかなくなりますので、発表する順番の子供が目印を持つなど、子供たちの状況に合わせて工夫します。
(※今回は割愛しますが、必要な場合はお問い合わせください。)

 

 

支援のご参考になれば幸いです。

それでは、また!