ADHD特性をお持ちの成人の方からお話を伺う機会がありました。

ご本人にご快諾いただき、手記を掲載させていただきました。

 

===============================================

Q.

あなたのことを簡単に教えてください。

 

A.

私は約1年前、偶然の転院をきっかけに、ADHD診断されました。

重度の睡眠障害と、二次障害として双極性気分障害の治療中です。学習障害はありません。
正社員経験を含め、断続的に何年か就業経験があります。現在は派遣社員です。
医師ではありませんが基礎医学について大学で専門的に学んでいました。また個人的な興味から、心理学、精神医学を独学していました。

 

Q.

相手の顔色や態度が変わると、「また私が何か相手を怒らせてしまったのだろうか!?」とパニックになってしまうことがあったそうですね。

そういう時は、どうやってお気持ちを落ち着かせておられますか?

 

A.

まず、「私にはトラウマがあり、それは私の意志や相手の感情、そしてお互いの人間関係とはぜんぜん無関係に、条件反射的に私の心のキズをガリガリ引っ掻いてくるものなんだ」と決めつけることから始めました。

調子が良い時は、気にしないで忘れるようにするか、笑ってごまかすか、良い方向に思い込みます。

 

Q.

良い方向に思い込む、とは?

 

A.
「この人は私に怒ったり嫌ったりしてるのじゃなくて、照れてるのかも、恥ずかしがってるだけかも、お腹が痛いだけかも」と、自分にとって良い方向に思い込むんです。

あとは、微笑みを浮かべて話題を変えたり、沈黙したり。

 

Q.

では、調子が悪い時は?

 

A.
そういう時は、気持ちを切り替えるのは、無理です(笑)。

可能ならその場を離れてタイムアウトをとりますが、離れられないなら、とにかく、更に状況を悪化させない為に沈黙を守ること、怒りや敵意がないことを示すために口角を下げないことに集中します。

 

Q.

なるほど。私は怒って黙っているのではありませんよ、とアピールされているんですね。

 

A.

眉毛は困ったような唇は微笑んだような表情を浮かべるようにしてます。

そうしながら、「これは私のトラウマ、この人とは関係ない。この人は私をいじめていた人じゃない。」と、ひたすら心の中で自分に言い聞かせて、パニックを起こさないように抑えながら、時間が過ぎるのを待ちます。

その後、できるだけすぐに精神安定剤を服用します。一錠はつねにポケットに入れていた時期もあります。

 

Q.

お薬の力を借りながら、努力してご自分の意識を変えていくといった感じでしょうか。

 

A.

そうですね。

私は動物が大好きで、あらゆる動物を理解することに強い喜びとコダワリがあります。定形発達者を「そういう動物」とみなすことで理解しようとしました。それが私には苦痛の少ない方法でした。

そうすると、人が照れたり、気まずく感じていたり、恥ずかしがっている表情が、私を嫌っていたり離れたがってる表情に似ているということに気づきました。
どちらにしろ私には区別がつかないのなら、できる限り都合の良いほうの解釈を採用しよう、と意識しています。

 

調子が悪くてその場をなんとかやり過ごしただけの時も、後からフラッシュバックが起きた時、「きっと私の思い過ごしだったに違いない。たまたま背中が痒かったのかも。」などと妄想に近いこじつけで、記憶をむりやりプラスに上書きしています。

「こっちが思うほど他人は私のことなんか気にしてないもんだ、向こうだってすぐ忘れるかもしれない」とか。

 

A.

自分でそれができなくて、うーんうーんと悩み続けてしまう方も多いですよね。

 

Q.

私の場合は、今の症状・状態の原因が、「1.治療中の精神障害」「2.ADHDの特性」「3.私の性格、個性」「4.そもそも人間だから、脳科学的に当然の反応」「5.その他」のうちのどれなのか、割と厳密に分類して、名前をつけて、ファイルに保存、という作業を淡々とやるようにしています。

 

A.

ファイルに保存というのは、頭の中のファイルに分類するイメージで?

 

Q.
そうです。負のスパイラルにはまって無駄に自己肯定感を下げないようにするため、役立つ作業だと思います。

 

A.

なるほど。そのくらい明確にしていくと、悩みに形が与えられて、整理しやすくなりそうですね。

お一人で気持ちを切り替えるのは難しくありませんか?

 

A.
発達障害に理解のある友人がいたので、LINEや電話で報告して発散したり、確認したり、肯定セリフを言ってくれるように頼んだりもしていました。

 

Q.

相手は背中がかゆいのかもしれないな、などと考えを切り替える方法は、どうやって身につけられたのですか?

 

A.
ひたすら科学的な事実(と私が信じるもの)を自分に言い聞かせることによって、です。

おそらく、「私には認知の歪みがあるぞ?」と、ある時点で認識できて、自力で正そうと努力したんだと思います。
ストラテラとデパケン治療開始から半年くらいたっていた頃だと思います。

 

Q.

なるほど。ご自分でご自分の様子を客観視して、他の人の考え方を理解しようとした感じでしょうか。

「認知の歪み」というのは、ものの感じ方や物事の受け取り方が、自分と他の人とでは違っている、ということですか。

 

A.

心が、自分の意志や望みと無関係に勝手な反応を示してしまうことがある、というか。

脳科学、心の理論、カウンセリング技術などを勉強していく中で、心とはそういうものだ、と認識するようになりました。

「この辛さは私の真実の感情じゃない、心が怪我をしているから触られたら痛いだけ。怪我が治れば痛くなくなる。」
というような趣旨のことを、自分に言い聞かせる、紙に書く、理解ある友達や家族に言葉にして言う、等を何回も何回も繰り返しました。

 

幸運なことに、その時期に働いていた職場は非常に人間関係がよく、客観的にどう見ても嫌われてない。イジメられてない。と「頭では」理解できている、という状況でした。
それでもなお、心が勝手に反応してしまうこともわかりました。

職場でフラッシュバックを起こして勝手に号泣してしまったこともあります(笑)

 

Q.

そうなんですか、、、

 

A.

その職場は転職して派遣社員になって初めての派遣先だったのですが、神様か何かに守られてるのかな?と思うくらい、かつて一度も経験したことのなかった、保護的な就労環境でした。

 

Q.

というと?

 

A.

とても優しい、天性で受容の上手な先輩がいたこと、

質問したらわかるように教えてくれる責任者が常に決められていたこと、
確認のために何度も同じ質問しても怒られなかったこと(スピードより品質を重視する商品を扱っていたため)、

といった環境です。

「質問されて理解できないのは私だけが悪いとは限らず、質問者が悪いかもしれない」という感覚が存在することを初めて知りました。

 

また、ここから何度か派遣先が変わったのですが、環境によって、また評価する人によって、私への評価がぜんぜん違うんだ!?ということも実感しました(笑)
相手の人間性、価値観、機嫌、期待度、仕事の忙しさ、相手自身の職場での人間関係の良し悪し…等で、派遣社員の私への態度なんて意味もなく変わるんだな、と思いました。

 

Q.

なるほど。一緒に働く仲間によって、働く満足度は大きく変わりますものね。

 

A.

人間関係のトラブルのうち、すべてがすべて私のせいだとは限らないかもしれない、と思えるようになりました。

 

Q.

今はどんなことが課題だとお考えですか。

 

A.

私の今の課題は、 安定して働ける人になること、そのために、職場で「心の害にならない」かつ「仕事をこなすのに支障はない」程度の人間関係を構築するノウハウを身につけること、この2点だと思っています。

「あまり喋らないしアピールも弱い」けど「仲間に入れてる」人が存在することを発見したので、職場での自分のキャラをそれに似せて設定することにしました。

 

Q.

ちょうどよいキャラを見つけて、それを演じるということですね。演じるコツなどもあるのですか?

 

A.
大事なのは笑顔、挨拶、時には相手の言動に反応して声を出して笑う等、コッチから「敵意はありません」「無口なタイプなだけで、この場を楽しんでいます」と示す行動を忘れないことです。不自然にならないようにやるのは難しいですが・・・
目指しているのは、理想的には「変わってるけど、仕事はまじめだし、感じのいい子」という評価の人物像です。
自己肯定感を保ったまま成人されたADHDの方、二次障害を起こさなかったか、または克服した非定型発達者ってこんな感じかな?という人を見たり、想像したりすると参考になります。

 

Q.

定型発達の方でも、職場と家庭とか、古くからの友人の前とか、キャラを使い分けていることもありますよね。

 

A.
そうなんですか。私には毎日が試みです。
でも、「派遣社員」という雇用形態は、もし失敗したら逃げてもいい!なんなら、この先一生顔を合わせることもないんだし!と思えるので、プレッシャーが少し減ります。私は失敗が怖くてパニックに陥ることがあるので、派遣社員は良い働き方です。同時に収入不安定、将来への不安というという別のプレッシャーもあるんですが(笑)。

 

Q.

最後に、この記事を読まれた方に一言お願いいたします。

 

A.

長々と読んでくださってありがとうございました。まだ若い非定型発達の人たちが必要以上に心を苦しませることなく、喜びの多い人生を送っていけますように。またその保護者さんたちに良い助けの手がありますように。心からお祈りしております。

 

Q.

大変参考になるお話をありがとうございました。