私の1歳の娘は、誰かが泣いているのを見ると、指さして「泣いちゃった」と言います。

また、絵本でも、登場人物が泣いている絵が好きで、これも指さして「泣いちゃった」。今は、誰かが泣いている絵本しか読んでほしがりません。

 

 

この様子を見ていて、

このくらいの子供にとって、泣いている顔が、一番わかりやすい表情なのだろうな

と思いつきました。

笑顔を理解した子供が、次に興味を持つのが、変化のわかりやすい「泣き顔」なのかもしれません。

 

 

以前、こんなご相談をうかがったことがありました。

特別支援学校に通われている11歳のお子さんについてです。

 

・ユキダルマが泣いている絵ばかりを描く

・お友達が泣いているのを見てニコニコ笑う

 

保護者はとても心配されていました。

このお子さんは、お友達とトラブルがあったわけでもなく、生活のほかの場面でも変わったことはありませんでしたので、

 

・お友達との関わり合いに変化がないかよく見守ってあげてほしい

・「こういう時は笑わないで『大丈夫?』と言ってあげようね」と指導する

・可能なら、眉根を寄せるなど「心配している顔」を練習して、言葉に表情も伴うようにしていく

・人の表情の意味、その表情をする時の人の感情について、時間をかけて一つずつ指導していく

・笑っているユキダルマ、怒っているユキダルマなど、いろいろな表情の絵を描いてみよう

 

このようにアドバイスさせていただきました。

 

(この時は夏でしたが、もし冬場だったら、

実際にユキダルマを作った経験が印象的だったのかな?とか、

そのユキダルマの目のあたりが溶けて泣いているように見えたのかな?とか、

といった可能性も考えたと思います。)

 

 

おそらくこのお子さんにとって、泣き顔は大変興味をひかれるものだったのでしょう。

見慣れた友達がいつもと違うおかしな顔をする、大きな声を出す、涙がボロボロ出る・・・

表情が大きく動くので、目で見てとてもわかりやすいですよね。

 

一方、表情があまり変化しない感情は、目で見てもよくわかりません。

たとえば、「苦笑」「軽蔑」「不快感」「焦り」「上機嫌」などの、微妙に揺れ動く、複雑な表情ですね。

大人ならば表情の微妙な変化に気づけますが、細かい情報をキャッチすることが苦手な子供たちには、ほぼ同じ顔に見えることでしょう。

 

子供たちは、わかりやすいものに興味を持ちます。

自分にとってわかりにくいものには、興味を持ちません。

 

私の娘や、例に挙げたお子さんが、泣き顔に興味を持ったのは、

・人の顔に興味がある

・中でもわかりやすい泣き顔に目がひかれる

ということなんだろうな、と思います。

子供たちの発達段階の中で、泣き顔に特に興味を持つ瞬間がくるのでしょうね。

(このあたり、科学的な研究がありそうなので、ちょっと探してみます。)

 

 

さて、例に挙げたお子さんは、「人が泣いているのを見て笑う」という行動をとりました。

保護者が心配されている一番のポイントもその点でした。

これはちょっと解釈に注意が必要なところです。

 

発達障害の子供たちは、表情の意味を理解していないことがあります。

また、表情をコントロールする力が弱かったり、自分の思ったとおりの行動を自分でとれないこともあります。

このお子さんが笑っていたのは、一般的な意味で笑っていたのとは違う可能性が高いということをしっかり理解してあげましょう。

 

一般的に、「人が泣いているのを見て笑う」というと、すごく冷たくて、イヤな感じがしますよね。相手の気持ちに共感せず、人の不幸を喜ぶかのような。

ただしそれは、泣くことや笑うことの意味を正確にわかっていて、表情や行動を思い通りにコントロールしている場合のみに言えることです。

 

例に挙げたお子さんは、友達が泣いていることを軽蔑したりあざ笑ったり、バカにしているということを表現したくて笑ったのではありません。

友達の泣き声に不安をかきたてられて自分が安心したくて笑ったのか、

興味深い泣き顔を見ることができて満足したのか、

ただなんとなく笑ったのか、

詳細は情報が足りないのでわかりませんが、私たちが一般的に考えるのとはまったく違う意味で笑っていたはずです。

 

ですから、こういう時は、「なんでこんな時に笑うの!」などと叱ることは避けましょう。お子さんにとっては叱られた意味もわからず、悪影響しか与えない叱責になってしまいます。

指導者は、冷静に、淡々と、

こういう時は笑わずに○○という表情をしよう、

○○と言ってあげよう、

と、具体的に、対処方法を教えてあげてくださいね。

 

 

 

ちなみに私の娘は、兄が泣くと、「○○くん、泣いちゃった。なんでー?」と聞いてきます。

そのつど、「おもちゃが壊れてイライラしてるんだよ」「頭をぶつけて痛かったんだよ」などと、理由や感情を教えるようにしています。

今すぐにはわからないでしょうが、いずれ、いろいろな人のいろいろな気持ちを豊かに理解できるような子になってくれたらな~と思っています(^ ^)