こんなご質問をいただきました。

 

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3歳、幼稚園の年少クラスに通園している。

自閉症スペクトラムの傾向があると言われ、検査の待機中。

幼稚園では、先生の話すことの意味がわからないという。

「何も面白くない。先生が何を言ってるかわからないから行かない。」

家庭では、2人なら話を理解するが、3人になると理解できない。

どんなトレーニングをすれば聞いて理解できるようになるか。

 

幼稚園では、担任の先生のほか、もう1名の先生がついているが、ずっとついていられるわけではない。

どうしても一人になる時間があり、それがとても苦痛のようだ。

ある程度、全体に対する指示が理解できるようになってから通園を考えた方が良いのだろうか。

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こちらのお子さんは、1対1のコミュニケーションではしっかりと話を理解されているそうです。素晴らしいですね!

「何も面白くない。先生が何を言ってるかわからないから行かない。」

と、しっかりと自分の気持ちを言語化し、はっきりと主張できるのも、とても立派だと思います。

「何も面白くない」と感じながらも、4月に入園してから今までの1ヶ月超の間、自分を抑えて通園し続けたところも、本当にすごいと思います。ご家庭で保護者と過ごす時間がお子さんの頑張りを支えていたのでしょうね。愛情たっぷりのご家族のご様子が想像できます。

 

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このような場合は、まずは個別支援を手厚くして、不安なく集団生活の流れに乗れるように支援することが一番ではないかと考えます。

保護者様のご意向としては、全体指示が聞けるようになってから集団生活に参加した方が良いのでは、ということですが、練習の順番としては逆の方が良いように思います。

 

どんなお子さんでも、いきなり集団生活の流れには乗れません。先生と1対1で信頼関係を築きながら、幼稚園生活を落ち着いて楽しめるようになってくると、少しずつ他の人にも気持ちを向けられるようになっていきます。

 

自閉傾向のあるお子さんの場合、耳で話を聞いて理解するという作業に大きな苦手さを持っている方が少なくありません。今回のご相談のお子さんも仮にそうだとすると、全体指示を聞き取って理解することは、ご本人にとっては大きな練習課題であるとも考えられます。小さいうちから苦手なところをたくさん練習して克服していくという考え方もありますが、得意なところを思い切り伸ばしてあげて、苦手なところを目立たなくしていくという考え方もあります。こちらのお子さんは1対1でしっかり話を聞ける素晴らしい力をお持ちですので、この力を活かして、集団生活を楽しめるようにサポートしてあげると、大きな成功体験につながるのではないかと思います。

 

もちろん、そのためには園の協力体制が欠かせません。お子さんにこれ以上つらい思いをさせないように、関わる大人が全員でお子さんに合う支援を工夫していければ良いですね。

 

「先生が何を言ってるかわからない」という言葉には、「だからどう行動して良いかわからない」「そのせいで先生に注意されるのが嫌だ」という続きがあるのではないかな、と思います。

先生のお話を聞き取れるようにする・理解できるようにする、という練習もいずれは必要ですが、その前段階として、集団生活の流れをお子さんが理解しやすいように整えてあげることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

支援の方向としては、以下のようなポイントが考えられます。

 

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1.活動の流れを視覚化

2.お子さんが一番不安に思う状況を見極める

3.2の場面には極力先生が側につく

4.先生が離れている間は、何をすれば良いかを指示しておく

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以下、 一つずつご説明します。

 

 

1.活動の流れを視覚化

朝の会→お外遊び→お昼ごはん→お絵かき→・・・  といったように、その日の活動の流れを、絵カードや写真カードで掲示します。

先の見通しを立て、不安を軽くするために、非常に効果的な支援です。

 

お子さんによっては、「お外遊び」の前に、「トイレでおしっこをする」「帽子をかぶる」「ベランダに出る」「上履きを脱ぐ」「上履きを靴箱に入れる」「靴を履く」・・・などと、作業内容を細かく指示した方がわかりやすいこともあります。お子さんが一連の作業のどこで戸惑っているか、よく様子を見てあげましょう。今回のご相談のお子さんは、自分の言葉で説明できる子のようなので、お子さんご自身と相談しながら支援内容を決めていくのも良いかもしれません。

 

 

 

2.お子さんが一番不安に思う状況を見極める

3.2の場面には極力先生が側につく

これは、園の人員の都合と、お子さんの支援の必要度とを、すり合わせるためにも必要なプロセスです。いつも側にいることはできなくても、せめてお子さんが一番先生を必要としている時にできるだけ側にいてあげましょう、ということです。

お子さんがイライラしたり、ソワソワと落ち着かない様子になったり、表情や全身が強張ったり、逆に無表情になったり、手いたずらを始めたり、パニックになったりと、いつもと違う行動を取り始めたら、それは心が緊張しているサインです。どんな状況でそれが現れやすいか、よく見守ってあげましょう。

 

たとえば、担任の先生が全体に対して指示を出す時には必ずお子さんの側に補助の先生がついてあげましょう。

「今から○○先生がお話するよ。先生の顔を見て、お話をよく聞いてね。」

などと声かけして、話が始まることを理解させます。先生のお話の後は、「よく聞けたね!」と褒めてあげ(話の内容を理解したかどうかは問題としない)、指示内容を改めて1対1で伝えてあげます。ここでも、イラストや写真を使って視覚的に説明したほうがわかりやすいかもしれません。

 

自由遊びの時間には、何で遊べば良いかわからなくて不安になるかもしれません。そんな時は、お子さんを一人にする前に、遊ぶ内容を誘導してあげましょう。

 

感覚が鋭いお子さんは、においや味が苦痛で給食が食べられなかったり、肌触りが嫌いで制服や帽子を着けられなかったりすることもあります。給食ではなくお弁当を持参する、園で指定されたもの以外の帽子も許可するなど、特別対応も視野に入れてみてください。

 

このように、お子さんが強い不安を表現する場面を観察すれば、考えられる支援が色々と見えてきます。

 

 

 

4.先生が離れている間は、何をすれば良いかを指示しておく

今回のご相談では「一人になる時間が苦痛」ということですが、一人でいる時に何をして良いかわからない、一人だと先生の指示が理解できないので不安だ、といった気持ちが隠れているのではないかと思います。

 

最初のうちは、できるだけ一人にならないよう、「先生と一緒にお茶を取りに行く」などのお手伝いをお願いして、先生と一緒に行動できる時間を増やすのも良いでしょう。

 

先生が側を離れる時は、

「これから先生は職員室に行きます。○分後に戻ってくるので、その間は、お庭でダンゴ虫を探してみてね。先生が戻ってきたら、何匹見つけたか教えてね。」

たとえばこのように声かけしておくと、一人の時間を積極的に楽しめるかもしれません。

 

「次に何をすれば良いかわからなくなったら、活動の流れカード(1で視覚化したもの)を見に行く」

「職員室の○○先生に声をかける」

など、不安になった時の対処方法を教えてあげるのもとても効果的です。

 

 

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以上は、園での生活に対する支援です。このような支援を行う中で、どんな支援がお子さんにとって一番合うか、どうすればお子さんが安心して生活を楽しめるか、色々と掴めてくると思います。その情報をもとに、支援を微調整していかれると良いでしょう。

 

お子さんが環境に対して安心感を持てるようになると、先生の話を聞き取ろうという集中力や意欲が沸いてきたり、実際にその力が育ってきたりすることがよくあります。お子さんはまだ3歳でいらっしゃるので、無理に集団生活に馴染ませようとするのではなく、お子さんが物事を受け取る力に合わせて環境を変える、支援を工夫する、というまなざしで見守っていくのが良いと考えます。

 

 

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ご家庭でも、同じように考えて接していただくと、お子さんの安心につながることでしょう。聞いて理解する力を育てるために、まずは1対1のやりとりを十分に積み重ねて、人と関わり合う楽しさを実感させてあげましょう。

 

その上で、たとえば3人で会話をする時には、話をする人が目印を持つようにしてみてはいかがでしょうか。誰に集中すれば良いかを明確にすることで、話を聞き取りやすくなるかもしれません。話し終えたら目印を置き、次に話したい人は目印を取って会話をつないでいきます。最初は一問一答のようにわかりやすいシナリオを用意して練習すると良いでしょう。

ただ、この方法は、一つのことに気をとられると他のことに意識が向かなくなるお子さんや、目から入る情報に左右されやすいお子さんには向きません。目印を受け取ることだけに気持ちが向いてしまったり、目印を見ることだけで精一杯になってしまったりすると、会話の内容は全く頭に入ってこなくなるからです。その場合は、話す人が「次は私が話します」と前置きをしたり、「次は○○ちゃんの話を聞いて」と声かけしたりすると良いかもしれません。

一方で、3歳ではこの練習はまだ少し早いかもしれない・・・という気もします。お子さんによるのでなんとも言えませんが、もう少し年齢が上がって、心と体が育つまで、3人以上での会話の練習は待っても良いのかな?とも思います。

今回伺ったお話の内容だけでは細かい状況まではわかりませんので、このあたりのアドバイスは的外れになっているかもしれません。どうぞご容赦ください。

 

ぜひお子さんのご様子に合わせて支援を工夫されてみてくださいね。

お子さんが幼稚園で楽しく過ごせるよう、心から応援しています!