こんなご相談をいただきました。
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1歳半の息子が、4歳の姉の一番嫌がることをします。
姉が一番大事にしている人形を持っていってしまいます。
姉が大変な剣幕で「触らないで!返して!」と叫ぶのに、
その人形を抱えたまま離さず、姉を振り返ってニヤッと笑います。
その様子を見ていると私(母)もイライラしてしまいます。
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誰にでも、「人に貸したくない、心から大切にしているもの」がありますよね。
こちらのお姉さんも、お人形さんがとても大事なのでしょうね。
さて、この場合、弟さんがどんな気持ちで人形を取っていくのかを考えてみましょう。
おそらく、弟さんは、「お姉さんが激しい反応を返してくれることを喜んでいる」のではないかと思います。
まだ1歳半のお子さんでは、相手の気持ちを考える・想像するということは難しいでしょう。単純に、お姉さんが自分に強い関心を向けてくれたことを喜んで、お姉さんがいつも必ず強く反応してくれる人形を選んで持っていくのでしょう。
お姉さんを振り返ってニヤッと笑う、というところから、お姉さんの反応を確かめて喜んでいる様子が伝わってきます。
解決方法はいくつか考えられます。
お姉さんに、人形を取られても騒がないように伝えるのが一つですね。弟さんにとっては、「人形=お姉さんの激しい反応」なので、お姉さんの反応がなくなれば徐々に人形への執着は薄れると期待できます。
お姉さんの気持ちを安心させるためには、弟さんの手が届かないところに人形を片付けておくのも一つの手です。その分、お姉さんには弟さんと関わる時間を持っていただくと良いですね。人形を介さなくてもお姉さんと関わることができれば、弟さんも安心でき、人形に執着する理由がなくなっていくはずです。
弟さんが人形を取ったら、丁寧に人形を返してもらいましょう。
可能ならば弟さんが自分で人形を手放すまで言葉や身振りで働きかけると良いのですが、お姉さんが泣いたり怒ったりして早く返してもらいたい時は、大人の力で取り上げても良いと思います。
弟さんには人形を手放せたことを褒めてあげ、抱っこして慰めてあげると良いでしょう。
自閉症スペクトラムのお子さんに関しても、同じようなご相談を伺うことがあります。
「人が一番嫌がることをする」
「何度言っても悪いことをする」
などなど。
人の気持ちを想像することが難しいお子さんは、自分の行動が相手にどう受け取られるか、自分がこの行動をしたら相手がどう思うか、に無関心なことがよくあります。そのため、相手の気持ちとは一切関係なく、相手の反応の大きさだけで自分の働きかけの効果を判断します。
ですから、悪いことを止めさせたい時には、周囲の人間が「反応しないようにする」というのは、一つの有効な方法になり得ます。
その一方、自分の気持ちには大変敏感で、ほんのちょっとしたことでも大きく捉えて、傷ついたり激しいショックを受けたりするので、働きかけには注意が必要です。
私も何度も失敗したことがありまして、、、そんな例を一つ。
「何度言っても家族への悪口を止めない」というお子さんに対して、「その悪口を言い出したら、家族全員が部屋を出てはどうか」というご提案をしたことがあったのですが、、、
ご家族がそれを実行した途端に、お子さんは号泣して自分の部屋に閉じこもり、「ぼくは嫌われているんだ」と騒ぎ続けて、なだめるのにずいぶん時間がかかったとのこと。。。このお子さんには刺激が強すぎる働きかけだったのですね。
(もう少し弱い働きかけを試してみていただいたところ、このお子さんの悪口はほとんど見られなくなったそうです。)
指導のご参考になればと思います。
それでは、また!